あと1キロメートル!
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態勢を整えて、皆で領主邸に向けて走る。
背後から襲ってくる死の気配を押し殺して、前へ進む。
ドラゴンが動くたびに、地面が揺れる。
そのひどい揺れが、自身の方向感覚を狂わしているように感じた。
「また前足来るぞ!!!」
団長が叫ぶ。
直後、ズガアァンという巨大な音とともに、大量の土が背中にかかる。
「ここから市街地に入ります!がれきに足元を取られないように注意してください!」
僕は、頭の中の地図を読み解きながら、必死に言葉を発する。
シードラの町は、既に建物と呼べるものは存在しない。
溶けた石材が地面にへばりついて、異様な文様を示している。
すると、ドラゴンが再度しっぽを振り回した。
付近のがれきを巻き上げるように、豪快に振りぬいたしっぽを、僕たちは命からがらかわそうとする。
「…!?しまった!!」
ガルムさんが体勢を崩した!
どうやら、地下のある家屋跡を踏み抜いてしまったらしい。
ガルムさんは今まで自分で対処してきたため、気づいた時には周囲のフォローが間に合わない状態だった。
「ガルムさん!!!」
僕はウーちゃんに揺られながら叫んだ。
そんな時、僕たちとは別の気配が急速に近づいて来た。
「よくやってくれた、冒険者たちよ!策があるのだろう!もうひと踏ん張りだ!」
馬に乗った騎士団長のカーマインさんだ!
カーマインさんはガルムさんを拾い上げると、ひらりとドラゴンのしっぽをかわした。
「すまん、迷惑をかけた。」
「いや、構わん。君たちの雄姿は見ていた。ドラゴンにぶちかましたとき、本当に討伐が可能なのではないかと心を震わせたよ。私も参戦して、できることをやってみようではないか。」
ガルムさんに対して、カーマインさんが発破をかける。
ドラゴンは、新しい敵を前に羽を大きく広げて羽ばたいた。
砂煙に当てられて目を閉じてしまい、気が付いた時にはドラゴンは再度空高く舞っていた。
「あいつまだ飛べんのかよ!」
団長があきれたように叫んだ。
ドラゴンの右翼には、先ほど射貫いたバリスタの矢が刺さったままだ。
どうやら、飛行能力を奪うほどの致命傷は与えられなかったようだ。
「ザイツェフさん!助けてー!!」
僕は心の底から、ザイツェフさんに助けを求めた。前線怖すぎる。
僕の叫びに答えるかのように、再度バリスタの矢がドラゴンを襲う。
今度は顔面を捉えたようで、急所をつかれたドラゴンは、再び地面へと衝突した。
「カーマインさん、馬の背中借りるぜ!」
「!?あい分かった!!」
カーマインさんが馬をドラゴンへと近づけると、ガルムさんが馬の背を蹴って、高く飛び上がった。
着地した先は、ドラゴンの背中。
彼はバリスタの矢が刺さった右翼に向けて走り出した。
「さっきのお返しだ!くらいやがれ!!」
ガルムさんがバリスタの矢を、手に持っていたバスターソードの柄で叩き込んだ。
ガキイィィィン!!!
ドラゴンのうろこで止まっていたバリスタの矢が、翼を食い破って進んで行く。
「グアラアァアァァァアア!!!」
ドラゴンが叫び声を上げながらのたうち回った。
バリスタの矢が食い破った翼は折れているように見える。
これで飛行能力は奪った!
「ハービットさん、ドラゴンの体温は!?」
「少し下がってきているが問題ない!」
このまま行けば、ドラゴンの体温が下がりきる前に領主邸に到着できそうだ。
残り1キロメートル。
いける、そう思った時に、僕たちの頬に冷たい雫が落ちてきた。
「そんなまさか…。」
ハービットさんが声をひきつらせた。
「ドラゴンは天候をも支配するというのですか…。」
僕たちの上空には、分厚い雲の塊が鎮座していた。
高火力のブレスを放ったら、空気が温められて、巨大な積乱雲が現れる説、あると思います。




