1話:真夜中の訪問者(レオン視点)
「ふぅ…。」
カウンターの中の棚を拭きながら、僕は大きく息を吐いた。
セレーネのメイド…ローザさん。
あれは…凄かったな…。
まるで軍隊の鬼軍曹みたいだった。
でも、彼女のセレーネに対する忠誠心は、本物だった。
エリアも、あんな風に、誰かを心から大切に思える人になってほしい。
…エリア…。
カウンター越しに、エリアの姿を見つめる。
彼女は、床を丁寧に掃きながら、時折、猫たちに話しかけている。
その姿は、本当に天使のように可愛らしい。
「エリア。」
僕は、思わず、彼女の名前を呼んでしまった。
「はい?」
エリアは、僕の方を向いて、にっこりと微笑んだ。
その笑顔に、僕はドキリとして、心臓が跳ね上がるのを感じた。
「き、君もいつか…誰かの大切な人になれるよ。」
僕は、少し照れくさそうに、そう言った。
エリアは、顔を真っ赤にして、視線をそらした。
「そ、そんな…。」
その仕草が、また可愛くて、僕は思わず笑ってしまった。
「ふふ…。」
「あ、そうだ。エリア、そろそろ閉店の準備を始めようか。」
僕は、話題を変えるように、そう言った。
「はい!」
エリアは、カウンターの中から、閉店作業を始めた。
椅子をテーブルの上に上げたり、床を掃いたり、猫たちのおもちゃを片付けたり。
僕は、レジを締め、明日の仕込みを始めた。
「それにしても、今日は色々あったね。」
僕は、そう呟いた。
エリアは、少し困ったような顔で言った。
「そうですね…。セレーネさん、ローザさん…それに、ルナも…。」
「ああ…。」
僕は、エリアの言葉に、頷いた。
ルナ…。
彼女は、一体何者なんだろう?
エリアと同じように、僕もルナのことが気になって仕方がない。
でも、ルナは、僕たちに何も教えてくれない。
ただ、いつも、僕たちを見守ってくれている。
…まるで…
…守護天使のように…。
その時、カランカランと、窓ガラスを叩く音がした。
「ん?」
僕は、窓の外を見た。
窓の外には、一匹の黒猫が立っていた。
「あれ? クロ…?」
クロは、この猫カフェ「ルナ」で暮らす猫の一匹だ。
クールな性格で、あまり人に懐かない。
いつもは、ルナのそばを離れないはずなのに…?
「どうしたんだろう?」
不思議に思いながら、窓を開けた。
クロは、スタスタとカフェの中に入って来た。
そして、エリアの足元にすり寄ってきた。
「クロ…?」
エリアは、クロを抱き上げた。
クロは、エリアの腕の中で、喉をゴロゴロと鳴らした。
「何か、言いたげな顔してる…。」
僕は、クロを見て言った。
「そうみたいですね。」
エリアは、クロの頭を撫でた。
クロは、エリアの腕から飛び降りると、床に何かを置いた。
それは、小さなドングリだった。
「ドングリ…?」
エリアは、不思議に思いながら、ドングリを拾い上げた。
すると、ドングリには、小さな文字で何かが刻まれていた。
《今夜12時に裏庭へ》
僕は、ドングリに刻まれた文字を見て、ドキリとした。
これは…一体…?




