勇者とメイドさん その86
「治療は時間にして約十五分、明けての歯医者でした」
「経過はどうよ」
「あと二、三回で終わる予定です」
「良好みたいだね」
外は七月の雨続きが嘘のような炎天下でした。そして自転車はちょうどパンクしていたので、仕方なく歩きました。
「中に薬を詰めたので、次から土台作りと被せ物だそうです。今回は恐らく最初に麻酔をされたので、また歯茎が腫れて地獄を見せられるかもしれませんが、施術は薬を詰める時に少し痛かったのみで、問題ありませんでした」
「違和感とかは?」
「特にありません。治療途中に吹きかけられた、辛い液体の様なものは気になりましたが、うがい薬で流されたのか残っていませんし」
「なにそれ」
「消毒の一種だと思います。知りませんけど」
恐らく麻酔の様なものを歯茎に受けてはいましたが、顎の感覚が狂うほどではないので、弱いやつだったのかもしれません。または麻酔ではないか。それはともかく、今回も歯をカリカリされたりされなかったりしました。
「それよりも不安なのが、次の予約を四日後に入れてしまったことです」
「そのくらい別によくない?」
「スパン短すぎではないかという話です。受付では止められませんでしたし、素人の考えなので心配する程でもないとは思いますが、そこだけ少し」
「まあ大丈夫じゃない」
こうして治療を受けているものの、歯髄の抜けた歯は脆いみたいなので、左の奥歯だけ早めに脱落することになりそうです。




