勇者とメイドさん その83
昼まで寝よう。
「メイドさんまだ寝てる」
「Zzz」
オフの日とはいえ、十時を過ぎてもなお寝ていた。加えてうつ伏せで、死んだように寝てるのも気になるところ。
「メイドさん、そろそろ起きたら(ユサユサ」
「……んぁ。……?」
「起きないし……」
手がかりを探るべく部屋を見回すと、机に何やら大量に書き込まれたノートやら資料やらが散らばっていた。なんとなく納得したから、立ち上がろうとした直後。
「抱き枕ですね? わかります」
「!?」
メイドさんにがばっと抱きつかれた。それも逃がさんと言わんばかりの強さで。しかし寝ていた。なんだこのかわいい生き物。
「Zzz」
「寝言がおかしいんですが。どんな夢見てるんですか」
まあ魔法使いも、毎晩寝ながらフラフラとどこかへ歩いて行き、数分後に何事も無かったかのように寝床へ戻ってきてたし、抱きつくくらいは普通の範囲か。起こすのもしのびないから、されるがままにすることに。
「Zzz」
「……」
「Zzz」
「……」
「Zzz」
「Zzz……」
メイドさん暖かかったからか、気づいたら一緒に寝ていた。数時間経っていたけど、起きてもメイドさんは抱きついたまま寝ていた。
「ちょうど抱き枕が、欲しかったの、です……よ?」
「あ、おはよう」
「……」
同じような言葉と共に起きてきた。ほんと、どんな夢見てたんだろ。そんなメイドさんは滝のように汗を流しながら硬直、飛び退いて土下座していた。それには勇者も器用だと思いました。メイドさん曰く、あくまで従者としての線引きはあるらしい。本人が気にしてないから別にいいのに。
「抱き枕欲しいの?」
「どちらかといえば欲しいですね」
「含みのある言い方するじゃん」
「……」
その日の夕飯はエビフライだった。
抱き枕欲しい。




