勇者とメイドさん その72
ラーメン屋ではやりません。
「メイドさん、ラーメンの前でしばらく待機してるけど、食べないの?」
「いえ、麺を伸ばしているので」
「……そういうとこあるよね」
「お得ですよ」
ラーメンはまず伸ばすところからです。十分くらい放置、以降は様子を見つつですが、ボリュームが増してこれがなかなか。
「でも伸びると美味しくないでしょ」
「私は質より量派ですから。コスパを良くしています」
「美味しくないのもそれで片付くのね」
実際に伸びていますし、問題ないでしょう。実際は一本数センチと誤差の範囲ではありますが。
「ええ……デロデロじゃん」
「これがいいんです、この麺が密集してる感が。食べます?」
「いや、遠慮しとく」
「まあそう言わずに」
「待って! それおかしいくらいに伸びてない!? なんでそれだけ出して、なおスープに浸かってるの!?」
「これは予想外ですね」
ご主人様の口にぶち込もうと麺を持ち上げると、不思議なことに際限なくスープから麺が出てきます。これは。
「そうですね……では言い方を変えます。これの処理を手伝ってください」
「正直不気味で仕方ないけど、それなら仕方ないか」
「少しでも残れば、そのうちこの家は麺で満たされますよ」
「嫌すぎる」
もしそんなことになれば、油汚れのため掃除が大変そうですから。進行形で増え続けるここは、協力してもらうということで。処理の最中ご主人様の顔が赤く染まっていたのは、体調が優れなかったからですかね。最初も断っていましたし、無理をさせてなければいいのですが。
スープが無くなれば麺が伸びるのが止まるのに気づいたのは、処理が終わってからの話。
カップ麺は伸ばします。




