勇者とメイドさん その62
歯医者は怖いのかどうか。
「歯医者に行ってきました」
「メイドさんが虫歯ねえ」
「しばらく通う必要があるそうです。疲れてる時は歯磨きをせずに、そのまま寝てしまうこともありましたから」
虫歯を感知していたものの、特に支障はないと放置していましたが、朝起きたら虫歯が脆くなっていたのか、一部欠けていました。舌が当たって痛いので、ようやく腰を上げました。
「で、どうだったの?」
「レントゲンを撮った結果、神経まで到達していたとか」
「ええ……」
「麻酔して、歯を削って、消毒と型をはめてもらってきました」
麻酔は思っていたほど痛くはありませんでしたし、削るのも水が多くて滲みるような痛みがするのは気になりましたが、これといって特筆すべきことはありませんでした。削る器具の音は子供が怖がりそうだとぼんやり考えながら、口を開け続けているのが疲れるという感想でした。どちらかというと、削る行為よりも器具が他の歯に当たっていたり、舌をどこにおけばいいかの方が気になりました。
「あと麻酔のせいで、左下唇から顎にかけての感覚がありません」
「麻酔だしね」
「麻酔が切れた後の鎮痛剤も処方されました」
「痛かった?」
「痛ければ手を上げてくださいと言われたのに加えて、痛みは多少感じていましたが、耐えられる範囲だったので早く終わらせるために、あえて意思表示はしませんでした」
「それもどうなの」
絶対麻酔が十分に効くまで待機とかなりそうだったので、あえてそうしました。本当はした方がよかったとかあるかもしれませんが。
一見薄黒い線だったからそこまで深いとは。




