勇者とメイドさん その61
子供の頃に親とするやつ。
「『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます』これほど恐ろしいフレーズもそうないよね。嘘ついただけで針千本って」
「間違いなく死にますね」
「間接的に親が子供に、嘘をつかれたら殺せって教えてるのが正しい解釈でしょ」
「過剰というレベルを軽く逸脱していますね」
嘘ついたら針千本。嘘をつくのがリスクに見合ってないから、真面目に考えれば嘘なんてつけないはずなのにね。これを教える方も教える方だけどさ。
「そこで針千本の代替案を考えたいと思います」
「現場が血溜まりと化す前にですね」
「このまま指切りしたら、拘束しながら針をチラつかせて脅すことになるからね」
針千本はやりすぎなので、他の優しいのにしましょう。
「では一ついいですか?」
「どうぞどうぞ」
「もし嘘をつかれたら、相手の首筋にキスマークをべっとり付けて、あらぬ噂を流して相手を苦しめるというのは」
「……すごい陰湿」
死なないとはいえ、社会的には死にかけてるような。
「相手の個人情報を、そういう類のものを売買している真っ黒な業者に売り払うとか」
「陰湿を通り越して悪質になってる……」
「いっそのこと連帯保証人になってもらって」
「もうやめて……それただの悪魔じゃん。デコピンとか、そういう可愛いの期待してたんだけど」
メイドさんの案がどれも怖すぎる。どうやって育てば、こんな恐ろしい考えがホイホイ出てくるのか。
「じゃあもうデコピンでいいですよ」
「期待に添えなくてごめんね? だけどあの先に待つのは生き地獄だからね?」
メイドさんはなぜあれらが通ると思ったのか。
その日の夕飯はサイコロステーキだった。
えげつないよね。




