勇者とメイドさん その59
駅前で路上ライブを見たり見なかったりする。
「こうして不思議と足を止めちゃうよね」
「ですね」
「路上ライブ」
「ですね」
通りがかった道端で路上ライブがやってたから、ちらほらいるお客に混じって観賞中。中身は悪くはない。
「わざわざ昼間のこんな通りでやる必要もないだろうに」
「人通りを考えれば、夜の公共施設前とかですね」
「見てると可能性は感じるんだけどね」
「そう言いつつも、メジャーデビューしてるアーティストと聴き比べたら、絶対路上ライブ側負けますよね?」
「よくわかってるじゃん」
なんかやってるから見ていく。良いから見ていくじゃなく、これは野次馬根性に近いかも。
「CD出してるけど売れてるのかね」
「二足のわらじでもない限りは、無理にでも売るしかないでしょう。生活かかってますから」
「毎回見た感じ買っていかない人が大半だけどね」
「ファンなら別ですが、そんな今日見た路上アーティストにお金を使う物好きも、そういないでしょうからね」
CDあんなに用意しちゃって……在庫抱えることにならないといいけど。
「路上ライブというと、最初に見たのは旅の途中の遠くの駅で、深夜に着いた時だったっけ。もちろん観客は誰もいなかったし、急いでたから通り過ぎたけど」
「実際路上でライブすること自体、客を引き止めるのも難しいですし。そのケースは時間帯に難ありですが」
あの路上ライバーは今どうしてるだろうか。がんばれ。
「そろそろ帰ろっか」
「いつまでもいる訳にもいきませんしね」
その日の夕飯は冷やし中華だった。
努力が報われるのはほんのひと握り。




