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勇者とメイドさん その49

私生活まで筒抜け。

「メイドさん顔色悪いけど何かあった?」


「はい、実は城に送るメイドレポートの紙を紛失してしまいまして」


「メイド……レポート?」


「こうしてご主人様が勇者であるため、城としてもある程度はその近況や行動を把握しておきたいのだとか。ていうので私が毎月送っているレポートのことです」



 メイドさんにも色々あるみたいだね、ならばだ。


「じゃあ紙を用意しよう」


「専用の紙なのですが、用意ですか」


「それは公的な書類じゃないんでしょ?」


「ええ、城が一個人の私生活にまで踏み入って行動を追うのに、それが公的というのもまずいですから」


「なら話は簡単だ」



 A4サイズの紙の右下に勇者サインを描けばおっけ。これで本人公認のレポート用紙の完成よ。


「これで大丈夫なんですかね」


「大丈夫。何ならついでに中身も書いてあげよう」


「はあ」


「悪いようにはしないから」



 まず最初は重要な用紙の紛失について謝罪しつつ、メイドさんにお咎めなしをお願いしておくか。


『用紙を紛失してしまったため、このような違う形でのレポートの作成をお許しください。ただ用紙を紛失した程度なので、メイドさんに制裁とかはお控えいただけると此方としても幸いです。もし発覚したら、国土の一部が蒸発してしまうかもしれないので』


「いきなり物騒すぎでは」


「いーのいーの。このくらいでいーの」



 主に私生活にまで踏みこんだ近況報告だっけ。最近は何があったっけか。


『何をしたかと言われても、最近はこれといってないですが、あるとすればフリーマーケットで孫の手を買ったこと、深さ十メートルの穴を庭に掘ったこと、剣聖の息子が女の四人にドナドナされていったことくらいですね。剣聖の息子のくせに女癖悪いんですかね』


「最後の違くないですか」


「どうせあっちも監視してるだろうから、別にいいでしょ」



 最後には本人が把握してることも書いとくか。


『なおこの文章は勇者本人が書いています。つまり私は、このレポートの存在に気づいています。自分の存在の強大さは把握しているので、監視するなとは言いませんが、これから何かする場合には許可取りに来てくださいね。あと隠してたのがバレたってことで、メイドさんに何かあっても国土の一部が消し飛びますのでご注意を』


「まあこんなとこじゃない?」


「本人が書いたことです。間違ってはいないと思うので、このまま送ってきますね」


「いってらっしゃーい」



 メイドさんがこの存在を明かせなかったのは、上から言われてたからだろう。ならばメイドさんを責めることは筋違いだ。城には一言添えたし、これからはマシになるかな。




 その日の夕飯はドリアだった。

当たり障りないことしかレポートに書けない日常。

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