勇者とメイドさん その47
「よくこの世界でマジシャン共は食べていけるよね」
「超常現象に見せかけた何かを、ほいほいとお手軽に提供できるくらいですから、不思議がるほどのことでもないのでは?」
「いや、魔術でいくらでも真似出来るじゃん」
「あ、……あー」
マジックを披露して食べているマジシャン。だが魔術あれらの小手先の技術とは別の超常現象であり、魔術の方が価値がありそうなものだけど。
「そうですね、慣れの差じゃないですかね」
「慣れ?」
「はい、魔術は普段使いしているせいで見慣れていますが、魔術を使わずに超常現象を起こしている、ように見せかけられるだけでも、観客からすれば素晴らしいショーになるのではないでしょうか」
そういうものか、ならば魔術だとバレないようにマジシャンを名乗れば、もしかして一儲けできるのでは? いや、既にやってる人いそうだな。
「マジシャンが魔術を行使するのは禁忌とされていますしね」
「バレなきゃ犯罪じゃないという言葉があってですね、というかその禁忌とやらも、業界の暗黙の了解みたいなやつでしょ?」
「ええ、まあそうですが」
「ならばだ」
ここでメイドさんに一度見てもらって、それから考察を深めるとしよう。手元に一冊のノートを用意する。
「ここにですね、封印していたであろう、メイドさんの読んでて恥ずかしくなるほど恥ずかしいポエムがあります」
「そ、それはまとめて封印していたはず! え、その若気の至りの塊を読んだんですか!? 嘘だと言ってくださいご主人様!」
「さて、今からこの世にも奇妙なポエム集を消してご覧にいれましょう」
「奇妙って言うな! 読んだんですか!?」
珍しく顔を真っ赤にして、ポエムを取り返そうと迫ってくるメイドさんをいなしつつ、種も仕掛けもないお菓子の空き箱にポエム集を収める。
「そして、三、二、ー、ハイッ!」
「返し……あれ、一瞬で消えましたけど、一体どこへ」
「この世界から消したよ?」
「…………?」
メイドさんが蓋を開けた空き箱からは、跡形もなくポエムは消え去っていた。案外簡単に出来るっぽい。
「はー、魔術がこんな簡単に組み込めるとわかったら、普通に魔術使ってる人の方が多そうだな……禁忌も何もあったもんじゃないね」
「実際はほとんど使っていないかもしれませんし、本当のところは当人同士にしかわかりませんよ。というかアレ読んだんですか!?」
「いやね、メイドさんも女の子なんだなって」
「ぐぬぬぬぬ」
普段無表情なのに、あの乙女の妄想全開爆弾を読んだ後だと、顔真っ赤にして唸ってくる今も含め、全てが可愛く見えてくる不思議。
その日の夕飯はすごい苦いゴーヤチャンプルーだった。




