勇者とメイドさん その43
6月といえば。
「ジューンブライドってよく言うよね」
「まあ一般的に言われますね」
「あれって中枢は諸々の販促の類でしょ?」
「初出は諸外国の神様やら風習やら気候がどうのこうのですが、こっちでは主にブライダル業界の云々とも言われています。六月は結婚が少なかったとかで」
実際六月に結婚すれば幸せになれる、そういう不確定な噂に踊らされて結婚する人が少なくないのだから、ジューンブライドという言葉を流したのは成功なのだろう。
「ただそのせいで結婚する人が増えた結果、母数が膨らんで離婚も増えるって皮肉な話だよね」
「迷信じみたものを信じすぎない、それが大事ですね。六月に結婚したからといって神様がどうにかしてくれる訳でもなし、自分の目で見て感じたものが全てですから、じっくり考えて、そこから正しい判断が出来なければ、到底幸せにはなれないでしょう」
「六月を意識しすぎて急いだりした結果ね。一度六月を逃すと次は一年後だから、そういう辺りも人々を急き立てるんだろうね」
生活を共にする相手選びなのだ、そう易々と決めていいものではないが、そうでない人が一定数いるのもまた事実。
「永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」
「離婚した」
「永遠の愛は誓いましたよね?」
「……ひどいね」
永遠の愛とかいう簡単に破られるすっごい重たい誓い。泣きたくなるわ。
「メイドさんは結婚とかしないの? 適齢期とかあるし」
「ご主人様に仕えている内はしないですね」
「ふーん……なんならもらってあげようかなー」
「いえ、ご主人様には相応しいお方が、他にいらっしゃるでしょう。どこかの国の王女様とか」
「それだと他国の王子様の役割取っちゃうからなあ……」
他国との権力争いがどうとか面倒だから、お偉いさんとは結婚したくはないんだよね。加えて社交場とかも面倒だし。
その日の夕飯は鰤の照り焼きだった。
そろそろ今年のジューンブライドも終了。




