対応に困った準レギュラー襲来
時間軸的にはほんの少しだけ後のお話。
「すみません! 勇者様! 助けてください!」
勇者の家の前まで来て位置がバレるとしても、そうして声を張り上げたのには訳がある。剣聖の息子である僕は今、紆余曲折あって僕を慕ってくれている女の子四人に追いかけられている。要するに修羅場だけど、それがあんまりにも酷いものだから逃げてきた。
どれくらい酷いかというと
「息子さん! 私と結婚して! 一生私と過ごして!」
「息子様ぁ、私と死んで永遠に一緒にいて♡」
「息子くんの血肉になって一緒に生きたいの! 早く私を食べてよ!」
「息子殿の息子をよこすのだ! 既成事実があれば玉の輿確定なのだから!」
この通り言うまでもなく……ね。
きっと勇者様を前にすれば鞍替えしてくれるはず! そんな期待を胸に勇者の家の前までたどり着いた。視線を巡らせると、庭で車輪のついた何かしらを整備していた勇者様が、こちらに気づいたのが見えた。ものすごい勢いで縋り付く。同時に物音がしたが、気にしていられない。近づくあれらに対処できるのは、知る限りは勇者様しかいないから!
「申し訳ありませんが助けてください! そこにいるだけでいいんで!」
顔に疑問を浮かべつつも、僕を貼り付けたまま待機する勇者様。そこに後ろから女の子達がやってきた。勇者様が視界に入ったはずなのに、誰一人黄色い声を上げない。振り返ってみれば、誰もが顔を青くして立ちすくんでいた。もう一度勇者を見れば、僕を対象外としてすごい威圧してた。何これ。そんな中、四人の女の子の一人が勇者様に声をかけた。
「あ、あの、すみません勇者様、勇者様のお宅に無断で踏み込んでしまったことは謝罪いたします。申し訳ございませんでした。お詫びと言ってはなんですが、その腰についているお方を回収させていただきませんでしょうか。勇者様の行動を阻害し、かつ勇者様の所有物を破壊している模様。勇者様には必要ないと考えられるため、よろしければこちらで引き取らせて頂きます」
所有物の破壊、その言葉に気になってふと周囲を確認すると、勇者様が整備していた車輪のついた何かの部品が外れていた。……もしかしなくても飛びついた時だ! 気づいた直後には一も二もなく僕は放り投げられ、女の子の一人の腕の中に収まっていた。
"!?"
「待ってください! 勇者さ……」
勇者様が面倒くさそうな表情で看板を持っている。
「厄介事はゴメンだ。疾くこの場を去れ」
その文面に僕は凍りつく他なかった。
「勇者様に対してのこのような蛮行、寛大な心で許してくださったこと決して忘れません! みんな、早くここから出てくよ!」
そうして勇者様に見捨てられた僕は、どこかおかしい女の子達にドナドナされることとなった。
これ以降も出てくると思いますが、息子さんについて掘り下げる予定は今のとこありません。




