勇者とメイドさん その37
目指せスカイツリー!
「高いとこまで来たなあ」
「ご主人様! そんなに高くまで箱を積んで何を!?」
「いや、なんか無性に積みたくなってさ」
そう、俺は今そこそこの数を積んだ箱の上にいる。まだ地上のメイドさんと会話が成り立つ程度の高さではあるが、さらに積んでいくつもりだ。
「ふー、かなりの高さになったけど、ここまで絶景とは」
「一一一一一! 一一一一一一!」
「メイドさん何言ってるか聞こえないや」
街を一望する程の高さに到達したが、メイドさんと会話が出来なくなった。仕方ないので紙に「夕飯までには戻る」と書いて丸めて落としてみた。これで大丈夫かな? 作業に戻るとしよう。
「もうメイドさんも見えないほどの高さだ。なーんかジオラマ見てる気分、こんなとこに他に人なんているわけないし、降り……!?」
そう、こんな高さにまで人がいたのだ。使ってる箱が少し違うものではあるが、同じように積んでいる人が遠くに二人くらいいた。ここで降りるのは勝ちを諦めた気分にさせられて癪なので、さらに積んでいくことにする。
「さーて、他の二人はどうかな?」
日も沈み始めた頃、二人を確認すると、一人の場所には成長が止まった箱だけが残っており、リタイアしていた。もう一人は継続している。しかし夕飯までには戻るとメイドさんに伝えた以上、そろそろ戻らないと。悔しいがお前の粘り勝ちだ。
「いい勝負だった」
「競っていたのですか?」
「え? うん、他にも積んでる人がいてね」
降りたとこにはメイドさんが待機していた。
「それはいいのですが、この積まれた箱はどうしますか? 私でも、ここまでの規模は手に負えないのですが……」
「ああ、それは大丈夫。そろそろ飛び立つから」
「?」
会話の中でメイドさんが不思議そうにしていると、箱が突然上の方から飛び去り始めた。メイドさんは脳が理解するのを拒んでいるような表情だ。根元の箱まで全て飛び去ってから、メイドさんが震える声で尋ねた。
「ご……主人様? あれは一体……」
「生命を携えた箱だけど。ああやって飛んで移動するけど、普段は箱なんだよね。あ、他の生物を捕食しないってとこで、生態系は壊さないから安心して?」
「……」
メイドさんは理解するのを放棄したのか、家に戻っていく。俺も最初見つけた時は、かなり受け入れ難かったし仕方ないか。
その日の夕飯はチャーハンだった。
一人は降りれるとこで降りたんでしょうね。




