勇者とメイドさん その31
泥棒って聞くと荒らしていくイメージ。
「アラームって……こんな夜中に侵入者ですかい。起こしやがって……」
「げんなりしますね。これから寝ようというとこに」
「……メイドさんまだ寝てなかったの?」
「勤めがありますので」
勇者の家ともなれば金品が置いてあるだろうと考えて、侵入してくる輩が少なからずいるため、我が家には敷地内への侵入者を検知して、けたたましく鳴り響くアラームとか多数の罠が設置してある。アラームは近所には不思議な力で聞こえないので、夜であろうと近所迷惑の心配もなし。
「ちゃっと行って捕縛してくるから、ちょっと待ってて」
「はい、油断のないように」
「そりゃもちろん」
メイドさんと別れて玄関から出ると、小柄な顔まで全身黒装束が罠にかかっていた。勇者の家に押しかける泥棒は、基本的に桁違いな泥棒なため、ほとんど罠は避けられて、玄関で遭遇するのが常だけど……。弱いし今回は消さなくてもいいかな。
「マヌケな姿だねえ、真っ黒な盗人さん? 勇者の家に押し入るってのに、詰めが甘すぎないかな?」
「……」
「だんまりね。ま、いいよ。反抗されるよか、その方がこっちも連行しやすいし」
縄で縛った泥棒を片手に、意外そうな顔をしたメイドさんの元へと戻る。
「あれ、今回はやけに早くないですか?」
「いや、弱かったから。ほらさ、こうして家の中に持ち込めるくらいには」
「なるほど。まあ排除の手間が省けたのは、よかったんじゃないですかね」
「とりあえずサクッと釘さして終わりにするけど、今回は放水させるから、メイドさんも身構えといてね」
「放水は苦手なのですが……まあいいでしょう」
勇者ともなれば、素人を脅す程度は屁でもないのだ。笑顔を作りつつ泥棒に放水威圧を向ける。するとどうだろう、脚をがくがく震わせながら、顔まで覆う黒頭巾と股間にとどまらず、腕から足まで全身に水の染みが広がっていくではないか。あーあーおもらしで床汚すし。
「余波のみとはいえ、これだけは何度受けても慣れませんね……対象の水分を強制的に漏出させる威圧……」
「強制的にやるわけだから、そこそこ身体への負担もあるしね」
旅の最中、巨大な水の生物を倒す際に編み出した秘術だが、対人だとカッコ悪い上に、手練には大抵効かないから封印してたけど、たまには役に立つもんだね。
「さーて盗人さんよ。これで格の違いは理解したと思う。お前は脅威にはなり得ないから、解放もしてやろう。ただし、二度と俺とその従者に干渉するな。もう一度言うが、脅威ではないと判断した故の解放だ。忘れるなよ」
「あ、ご主人様。尿で汚れた箇所の掃除の追加もお願いします」
「だそうだ。道具は貸すからそれも追加」
綺麗になってから泥棒は追い出したが、跡地には強烈なアンモニア臭が残った。
夕飯は白身魚だっけか。
ネタがないので30話に閑話は付属しませんでした。




