勇者とメイドさん その26
学院は蹴ったので街に七不思議。
「ここが例の階段ですね」
「いたって普通の階段だけど……ほんとに増えるのかね?」
「噂でしかないので、過度に期待せず待ちましょう」
ご主人様の要望で今日はこの街の七不思議の一つ、丑三つ時に段数が二段増えるという怪奇の階段に来ています。大通りから続く小道にひっそりと佇むその階段。気づいたら段数が増えているそう。
「先に数えてきたけど、通常時は二十段だった」
「ならば発生時は二十二段ですね。それはそうと、先程から何やら悪しき気配を感じるのですが。時間が近づいているせいですかね」
「まあね。一応勇者が対応しようと思えるレベルだから、その性質に応じて処理はするよ」
一般メイドですら悪しき気配を感じ始めました。この階段では段数の増加により、登りきったと思っていたせいで転んだとか、どこからともなく現れたバナナの皮で転げ落ちたりだとか、そういう事故も多発しているそうです。ちなみに後者は死者も出ているため、生半可なそれではないのでしょう。
「さて、時間です。ご主人様」
「じゃ登ろっか」
「はい」
ご主人様と共に登ります。ここは仮にも怪奇の発生が噂されている場所。ご主人様と一緒にいるに越したことはありません。
「十九、二十。……二十一と二十二段目が追加されてる」
「ご丁寧にバナナの皮まで設置してあります」
「そしてこの雰囲気は……この階段取り壊した方がよさそうかな」
「ご主人様がそう感じるのなら正解でしょう。私はそれほど脅威には感じていませんが、私が正確に感知出来ていないだけだと思われるので」
こうしたスペックはご主人様の方が格段に上でしょう。素人の出る幕ではありません。そうして幻の二十一と二十二段目は、ご主人様の蹴りによって取り壊されました。バナナの皮はスーっとその場からフェードアウトしていったので、良いものでないのは確かでしょう。
その日以降追加の階段があった場所には、階段の残骸の出現が続き、バナナの皮も姿を見せず、事故は起きませんでした。
そうして七不思議は六不思議に変わりました。
物理的に壊せるならまあ。




