勇者とメイドさん その23
夢は見ないほうです。
「……あ、夢か」
「おはようございます、ご主人様」
「もう午後だけどな」
「ところで、どんな夢を見ていたのですか?」
「某アイドルと恋人になる展開。その手前で、現実の音がリンクして目が覚めた」
いい陽気だったから、つい庭で寝てしまった。割といい夢を見れたからよかったけど、もう少し見ていたかったかも。
「騒音で目が覚めたけど、メイドさん何してたの」
「見ての通りです。こうして豚を私の独断と偏見で仕分けていました」
「待って、うちの庭は牧場じゃないですけど!? どっから持ってきたの!?」
「ちなみに中でも選りすぐりの精鋭豚は、ちくわに加工されます」
「いや、そこまで聞いてないよ! そしてなぜ豚がちくわに!?」
周囲を見渡すと、今までは全く見なかった木の柵で豚が仕分けられていた。何だこれ。メイドさんも謎に自慢げだし何だこれ。
「心配せずとも仕分けから漏れた豚は、漏れなく放流されて、立派な木に育ちますよ」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「ご主人様は豚を放流するの、お好きだったではないですか」
「いや、そんなことはないし、一言も言ってないからね」
何だこれ。寝て起きたら世界が混沌と化していた。豚がちくわになるとか……誰か助けて。
「さあ、こちらのタッパーに、放流予定の豚が詰められています。遠慮せずどーんとやっちゃってください」
「いや好きじゃないから一」
「一ね!」
その一文字を叫ぶとともに、自室のベッドから跳ね起きた。汗ぐっしょりだし、間違いなく悪夢の類だあれ。いや……待てよ。さっきは夢から覚めてなお夢だった。もしかしたら今も夢なのでは……。
「メイドさん!」
「そんなに血相を変えて、何かありましたか?」
「ちょっとつねってみて!」
「承知しました(ギュー」
「いだだだだだ」
よかった……現実に戻ってこれた。助かった……。
「ところで、なぜご主人様をつねることに?」
「……夢から起きたらまた夢でさ。今回も夢じゃないかなって」
「とんでもない夢ですね」
もう二度とごめんな悪夢ではあったが、最後のタッパーに詰められるサイズの豚について、聞いておけなかったのが心残り。どんな原理でタッパーに詰められてるのか。
その日の夕飯は生姜焼きだった。
幼少期の悪夢はだいたいどんなのか思い出せます。




