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濡れ衣ヒドインですが、ラスボスに執着されています  作者: 紗雪ロカ


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9/10

9.私を魅せ続ければいい

「……何か勘違いしているようですが、私はあくまで知的好奇心を満たしているだけ。それが悪用されようが平和的利用されようが知ったことではありません。過程が楽しめればそれでいいのです」


 え? と、間の抜けた声が出てしまう。それはつまり――、


「もしかして、先生が物騒なアイディアばっかり出していたのは……」

「手っ取り早くリターンが得られそうだったので。ポーションも、手間はかかりそうですが成果としては悪くなさそうですね」


 知識として蓄えれば、それはいずれ何かの役に立つ。無駄な事などこの世に一つもないのだと彼は続ける。

 つまり進んで人を害する悪意はないが、倫理のブレーキはついていないというわけだ。

 それに思い当ったイノリは、引きつった笑みを浮かべながら心の中で苦笑する。


(好奇心の塊というか、本当に魔法が好きなんだなぁ)


「まぁ、これで儲けられたら実験施設の強化にも色々と資金を注げますからね。ちょうど欲しい機材を取り寄せようと思っていたんです」

「あぶない実験だったら止めますからね」


 苦笑いは出てきたが、彼の本当の姿が少しだけ見えた気がして嬉しくなる。ゲームの中ではマッドでいかれたキャラ扱いされてきたが、もしかしたら、彼のこういったエピソードもいずれ配信されたのかもしれない。


(それが行き過ぎて、国家転覆にまで手がかかるのはどうかと思うけど)


 ゲームのリーシャは彼を撃破して止めたが、新たな一面を知った自分なら違うアプローチ方法が取れるのではないだろうか。少しドキドキしながら彼をチラリと見上げる。


「ククク……光の魔力があれば、前々から妄想していたあれそれも現実味を帯びてきます。しかもイノリ君に聞かせれば思いもしない方向性も見えてくる。いいぞ、いいぞォ」


 外見や笑い方はどう見ても悪役なのだが、好きなことに熱中している子どもにも見えて来るから不思議だ。

 なんだかおかしくなってフフと笑っていると、こちらに向き直ったネクロスはニマァとクセのある笑みを浮かべた。


「そう、キミが引き起こすムーブメントは実に面白い。瓶のアイディアも斬新だ」

「そ、それはどうも……?」


 褒められているのだろうか? なんとなくむず痒くなって頬を掻くと、彼はこちらに手を差し出してきた。銀の月を背にしたシルエットの中で、金の眼差しだけが光る。


「イノリ君、私を悪事に走らせたくなければこのまま魅せ続ければいい。期待していますよ」


 それはどこか挑発的な色を含んでいた。それに気づいたイノリは挑みかかるようにその手を取った。


「ええ、あなたを国家の敵になんてさせませんから」


 ***


 そこからさらにひと月が過ぎた。


 ある日の昼下がり、秘密の研究所から顔を出したイノリは誰も居ないことを確認してから螺旋階段を足取り軽く上り始める。最上階までたどり着くと、ネクロスの表の研究所の扉をノックした(元のゲームではアイテムショップだったところだ)。返事を待ってから覗き込む。


「せんせー、いますか?」

「おや、どうしました?」

「一区切りついたらお茶にしようかと、一緒にどうです?」


 普段、昼食を食べた後はそれぞれの研究所に篭もって作業をしているのだが、今日貰ったバスケットの中にいい香りの茶葉とマドレーヌを見つけたので声を掛けてみた。

 いつもネクロスは城の厨房から籠を受け取ってくるのだが、食にあまり興味のない隠者に対してコックが気を使ってくれたのだろう。


「わたし、下で待ってますから――」


 そこまで言いかけたイノリは、下から登ってくる誰かの足音にヒュッと息を呑んだ。素早く中に入り、机の影に逃げ込んだところで扉がノックされる。


「失礼いたしますわ」


 聞き覚えのある声にそーっと覗くのだが、揺れる金髪縦ロールの一部が見えて、思わず叫びそうになってしまった。口をバッと抑えて慌てて引っ込む。


「突然の訪問申し訳ありません。お邪魔でした?」

「いえいえ、こんな寂れたところにようこそ。ラディウス嬢」


(悪役令嬢カタリーナ!?)


 間違いない、イノリ……いや、リーシャ(ヒドイン)を逆断罪した彼女がどうしてここに?

 息を潜めて成り行きを見守っていると、彼女は紫の瞳をキラキラさせ感嘆の声をあげているようだった。


「まぁ! ここがかの有名なルード師の研究所なのですね。一度見てみたかったんですの」

「ハハハ、若いお嬢さんが見ても面白くもないでしょう?」

「いいえ、興味深い物ばかりです」


 見て回ってもいいですか? と言い、カタリーナは狭い研究室を歩き出す。彼女が移動するのに合わせてイノリは床に手をつきながら必死にグルグルと机の周りを回った。


(ひぇぇ~~)


「あら、もしかしてそれが噂の……?」


 そして、ある物を目にしたカタリーナは、足を止める。

 なんだろうと覗くと、彼女が視線を向けていたのは、部屋の隅で作られているポーションたちだった。懐から同じ物を取り出した彼女はこう言う。


「近ごろ、市場に出回り始めた簡易治癒ポーション。製造元は伏せられていますが、やはりここで作られていたんですのね」

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