七月七日【file. 7】
「……申し訳ないけど、下級に遊ばれた程度で泣きついてくるような弟子は取ってないよ」
「……っ、そうですよね……」
「みやびちゃんはまだ異能力を人に向けることは精神的に難しいと思うんだ。
だから、これからここのトレーニングルームで霊気を育てるところから始めてもらうよ」
「……!弟子に、して頂けるのですか……?」
「将来の娘に、師匠と呼ばれるのは勘弁願いたいかな」
「しょ、将来の娘……!?」
その言葉が鼓膜を揺らした瞬間、私の頬が急激に熱くなるのを感じた。
絶望に沈んでいた思考が、予想だにしない角度からの言葉に強制終了させられる。
「重要なのは、物怪との共存。みやびちゃんの場合は、物怪・瀬織津姫の霊気をコントロール下に置いた時、劇的な進化が起こるはずだよ。
……まずは霊気総量を今の十倍に。体中、空間にも霊気を放出して、単体の技を繰り出す練習をする事。
これが来月までのノルマだけど、付いてこれそう?」
今の私は、異能力すら扱えないほど絶望的なはずだ。
育てる価値なんかない、最強の物怪を宿しながら一般人と遜色ない落ちこぼれ。
なのに大和先生は、私を見捨てず私が出来る最大のノルマを与えて下さった。
「……はい。何度倒れても、立ち上がり続けます……。血を吐いても、飲み込みます……っ。
だから……」
「大丈夫。みやびちゃんは不完全何かじゃない。望むなら、霊その者を救うことすら出来てしまうかも知れないんだから」
霊その者を救う。
霊を寄生させられた人達を救うこともできると、大和先生はやけに確信した口調で言い放った。
誰も成し遂げた事のない、G.H.O.の隊員にすら切り捨てられた力を、先生は見いだして下さったのだ。
雪希ちゃんと違って、何も出来ない私なんかに……。
瀬織津姫。
私の中に眠る、実体のない、ただ冷たいだけの水。
それが『劇的な進化』を遂げる未来なんて、今の私には想像もつかない。
けれど、先生の確信に満ちた声を聞いていると、泥の中に沈んでいた私の魂が、不格好に羽ばたこうともがくのを感じた。
「これからよろしくね」
「……!こちらこそ、よろしくお願いします……!」
私の中で凍りついたまま動かない『水』。
触れれば指がちぎれるほど冷たく、形を持たないその奔流が、先生の言葉に反応して微かに波紋を描いた気がした―――……。




