7 見習い騎士と双子の王子と王女
青みがかった黒髪が、廊下を抜ける春の暖かな風に揺らされる。
どこかの窓が開いているんだろうかっと思いながら、ロトは、いつものようにファレーズ王国の王女キャサリン姫の執務室の警備の任務についていた。
先日のキャサリン姫の王宮抜け出し事件は、特に怒られることもなく解放された。赤髪の女性騎士アンから小言を言われてる間、ずっとキャサリン姫がニコニコとしていて、何言っても無駄だっと判断したらしい。
ロト達が拾ってきた子猫テトラも、きちんと面倒を見ることを条件に飼うこと許された。
そのテトラは、ロトの足元で丸くなっている。部屋に置いて来ても、自分で扉を開けて付いて来てしまうのだ。何度か部屋に戻しても付いてくるので、今では、どこに行くにも連れて行っている。
テトラは、春の陽気に誘われて気持ち良さそう眠ってる。その耳がピクピクと動いている。
その姿を見たロトも、思わずあくびをしてしまうのであった。
王宮の王族の居住区へ続く曲がり廊下の角から、小さな2つの影がロトを見ていた。
「ロト、いる?クララ」
「うん、いるよ。エリック」
キャサリン姫の双子の弟と妹のエリック王子とクララ姫が、折り重なるようにロトの様子を伺っている。2人ともキャサリン姫と同じ金髪と青いの瞳を持っている。
「ロト、何しているの?クララ」
「あくびしている」
「眠たいのかな」
「あ、そうだ。あたしに、まかせて」
クララ姫は、いいことを思い付いたとの気持ちを顔に表すと、その青色の瞳を金色に輝かせて、えいっとロトに両手を向けた。
キャサリン姫は、執務室で忙しく書類仕事をしている。胸には、ロトからもらった小さな小鳥の形の銀細工のブローチが付いている。いつものように扉の前には、赤髪の女性騎士アンが立ち、来客の取次ぎをしている。そして、キャサリン姫の側には薄い茶髪のメイドのヒルダが控えている。
キャサリン姫の王宮抜け出し事件には、当然に共犯者がいた。王女であるキャサリン姫を1人のする事はなく、使用人か警護か四六時中誰かが側にいる。朝起きてから夜寝るまで、必ず誰かが側にいる。
キャサリン姫が王宮を抜け出した日、キャサリン姫は、メイドのヒルダに頼み込んで、王宮から抜け出しを手伝ってもらったのだ。
いつも無表情のヒルダにとっての幸せは、キャサリン姫の幸せである。ここ最近、王城から出られずに憂鬱になっていたキャサリン姫を見ていたヒルダには、キャサリン姫の頼みを断れなかった。そして、帰ってきたキャサリン姫が、ニコニコしているのを見て、頼みを聞いて良かったと思っているのだ。もちろん、メイド長には、盛大におこられたが。
「うわぁ!」
突然、扉の外から叫び声が聞こえた。
「どうした!」
アンが、剣の柄を握りながら、扉から飛び出す。
そこには、びしょ濡れになったロトが立っていた。それを見たアンは、言葉なく固まってしまう。
「やったぁ!ロトぉ、目ぇ覚めたぁ」
「あ、待ってよ。クララ」
水魔法を放ったクララ姫とエリック王子が、ロトに走り寄って来る。
「コラァ!あなた達、何しているのじゃぁ!」
執務室から出て来たキャサリン姫が、大きな声を出す。
「え〜。なんで怒るのぉ。かあ様が、眠たい時はお水を浴びなさいって言っていたよ」
「うん、言ったよ」
双子のクララ姫とエリック王子は、良いことしたのに、なんで怒るのっと表情に出して言う。
「あはは。クララ姫、エリック王子、ありがとうございます。おかげで目が覚めました。でも、いきなり人に魔法を放ってはダメですよ。びっくりしちゃいますからね」
ロトは、2人の目線に屈んで、優しく言う。
「もう、ロトがそう言う事言うから、この子達は調子のに乗るのじゃ」
キャサリン姫は、呆れたように言う。
クララ姫とエリック王子は、今年で3歳になる。ロトが見習い騎士になった年に生まれたのだ。
この双子のクララ姫とエリック王子は、赤ん坊の頃から人見知りが酷くて、世話係である使用人を困らせていた。
ある日、困り果てた使用人が、泣き止まない双子を連れてキャサリン姫に助けを求めて来た。この頃のキャサリン姫は、まだ政務をしておらず、講師を招いて勉強をする日々であった。単なる村人で知識もなかったロトも、机を並べて座る事を許されいたので、読み書きや基礎的な知識を教わっていた。
泣き止まない双子をキャサリン姫が、あやすがなかなか泣き止まない双子を見ていたロトが、試しにっと片方のクララ姫を抱っこすると、ピタッと泣き止んだ。エリック王子の方も抱っこすると、こちらも泣き止む。ロトがあやすと、キャッキャッっと笑い声まであげるのだった。
こうして、ロトは双子のクララ姫とエリック王子の傅役みたいな立場になってしまった。
「ロト、神殿行くよ」
「一緒に行くよ」
クララ姫とエリック王子は、ロトの左右の腕を引っ張りながら言う。
「わかりました。ちょっと、着替えて来ますのでお待ち下さい。テトラ、お相手をしてあげて」
「ミィー」
テトラは、返事をしてクララ姫とエリック王子の足元に行く。
クララ姫とエリック王子は、魔法が使える。しかも、キャサリン姫が使えない攻撃魔法を使えるのである。
魔力は、100人に1人の割合で持つと言われている。生まれてから洗礼で魔力の有無を調べて、魔力がある事がわかると、7歳から神殿に通って魔力の制御の訓練を行うのだ。クララ姫とエリック王子が、持っている魔力は強大だ。神殿の司祭が、2人の魔力を調べたところ、普通の魔道士の数倍の魔力を持っている事がわかり、大騒ぎなったのだ。そこで、通常なら7歳から、魔道士の訓練を3歳から始めることとしたのだった。
クララ姫とエリック王子の月に数回の神殿での訓練には、ロトは傅役として同行するのであった。
王城から神殿までは、馬車で向かう。馬車の中には、クララ王女とエリック王子、傅役として肩にテトラを乗せたロト、世話係のメイド、そして、ファレーズ王国の魔道士兵団の魔道士であるジジが乗っていた。魔道士であるジジは、女性でロトの同じ歳の15歳である。銀色の髪を耳が少し出るぐらいで切り揃え、魔道士の証である黒の外套を羽織っている。背は背の低いロトより低く、見た目はもう少し幼く見える。しかし、幼い頃より高い魔力を持ち、通常なら月に数回通うだけで良いのに、7歳で神殿に住み込みで魔法の鍛錬を続けて、僅か15歳ながら魔道士として認められたのである。そこで、まだ若く幼い顔立ちのジジが、魔道士兵団からのクララ姫とエリック王子の魔法の教師役として付けられたのである。
単なる見習い騎士であるロトは、王族の馬車に乗ることなど出来ないが、クララ姫とエリック王子が一緒に乗らないと、ぐずるので特別に許されている。
「ロト、そのケモノは何?」
ジジが、その独特のの言い方で尋ねる。
「ジジ、ケモノじゃなくて、テトラだよ。ねぇ、エリック」
「うん、そうだよ。テトラだよ」
ロトが答える前に、双子のクララ姫とエリック王子が答える。
「テトラは、この前ビオデ村にお使いに行った時に拾ったんです」
ロトは、テトラの頭を撫でながら答える。
「そうか」
と、だけ言うと、ジジはテトラをジッと見つめていた。
「ジジ、テトラと遊びたいの?」
「テトラは、いい子だから遊んでくれるよ」
クララ姫とエリック王子は、ジジがテトラと遊びたいと思ったみたいだ。
「いえ、我はケモノはちょっと」
ジジは、動物が苦手らしい。
「テトラはかわいいのにねぇ、エリック」
「かわいいのにねぇ、クララ」
「ミィー」
テトラの頭をなでなでっと、クララ姫が撫でるとテトラが、気持ち良さそうに目を細めて声を上げた。
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