オマケそのさん
一応これで終わりです。
私がアンジェ・シェフィールドとして生まれてから早20年、私はリューと既に婚姻を交わしていた。
シェフィールド家にリューが婿養子に入る形の結婚である。私はその日、昔馴染みのアース・ヴェーセトンからの手紙を受け取っていた。
アースは私とリューよりも三つ上の公爵家の息子で、今は軍で働いている。年が近いからとアースは第一王女であるミンナと第二王子のリューの遊び相手の一人で、私たちとは幼なじみみたいなものである。
「…へぇ?」
その受け取った手紙には、『魔王』出現に伴い教会が自分たちの力を外に示すための手段として『勇者召喚』を企んでいるということが書かれていた。
一度調べたのだが、『勇者召喚』のための召喚陣は私が前世で生み出したそれ、そのままである。そのままの召喚陣が広まり、そのままそれが定着していたのだ。
正直、それは少しつまらないと思っていた。どうせなら私の生み出したそれをいじくってもっと効率よくとかなっていればよかったのにと。まぁ、それをいったらリューに「そんなこと出来るのはアンジェだけだよ」なんて言われてしまったが。
私は現世では、前世とは違って魔法も使えたからそっち方面で色々やっている。前世のように魔法具を生み出したりも出来るが、今回はそれは趣味でやっている。前世で出来なかった魔法が使え、戦闘出来ることが正直うれしくて(前前世で男だった身としては)、ついそちらに熱がいってしまう。
「リュー」
「なに、アンジェ」
「国が『勇者召喚』を行うつもりらしいわ」
「へぇ? どうするの?」
「どうもしないわよ。どうでもいいわ。ただ、ちょっとどんな人が召喚されるか気になるわ」
「…俺以外みたら相手殺すよ?」
「安心して。別にそういう感情はリューにしかないから」
相変わらずさらっと恐ろしいことを言うリューに私は苦笑しながら答えた。本当に、相変わらずなんだから。
『勇者』がどんな人間なのか、色々気になるから様子だけ見とくとしましょうか。
結果として召喚された『勇者』は二人だった。『白峰光』と『黒澤晃』という名前の二人である。
それでいて、『勇者』としての化け物染みた能力は『白峰光』の方しか落ち合わせていなかった。いや、一応『黒澤晃』の方にも少しはあるみたいだけどね。
というか、私、二百年前は一人だけ召喚されるようにしてたはずなんだけどと思って後からその召喚陣見に行ったんだけど、いじってあったわ。文献にのってた『勇者召喚』の魔法陣は二百年前のそれと一緒だったんだけど、どうやら教会がいじったらしいわね。
そうそう面白いことに教会には『ナーシャ・リナンティアの再来』と呼ばれている『神子』が居た。その子がいじくりまわしたみたい。でも全然駄目ね!
いじったせいで私が折角綺麗に作ってた魔法陣がぐちゃぐちゃになってたわ。いじったおかげで『勇者』に対する強化は少しだけ強くなったみたいだけれども、そのせいで『勇者召喚』で二人も召喚されたり、召喚された人間全てに行くはずの強化が、『白峰光』にしかいかなかったじゃない。しかも現世では帰還の魔法陣伝わってないから、帰せないっていうのに何で召喚するのかしらね?
「アンジェ、どうするの?」
「ちょっと接触してから決める。リューも一緒行こう?」
私にひっつきながらいたリューの言葉に私はそういってリューを誘った。
で、接触したわけだけど、断然『黒澤晃』の方が面白かったわ。いや、だってね、『白峰光』って何だろう地球で言うハーレム主人公そのままだった…。見ていて面白いと言えば面白いけれども、あの鈍感ぶりはおかしいと思った。
まぁ、『黒澤晃』は面白いとは思ったけれども、とりあえず二人とも私は放置することにした。覗きはするけどね?
覗いていてわかったんだけど、アースの幼なじみの女の子が『黒澤晃』のパーティーメンバーとして、軍から選出されたみたい。私はあったことないけれども、アースが言うには魔法具を作ったりも出来る努力をする子らしいわ。一度あってみたいわね。
ふふ、アースの幼なじみの女の子も見ていて面白そうだし、ずっと覗いときましょう。
私が魔法をつかって気付かれないように『白峰光』と『黒澤晃』を覗いているのをリューは不服そうに、だけれども「アンジェが楽しいなら我慢する」といって見守っているのだった。
―――『勇者召喚の召喚陣』、それを生み出した天才は現在『勇者』を傍観中。