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272  作者: Nora_
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05

「やあやあ」

「生駒よく来てくれたな――はいいが、日野的に大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫、大介はいま男友達と遊びにいっているからね。ここには円ちゃんと裕香と私、そこに我妻がいるってだけなんだからほとんど同条件だよ」


 そ、そういうことにしておくか。

 もっとも、俺から頼んで今城に呼んでもらったわけではないから堂々としておけばいい。


「それで?」

「ああ、どうせなら円的に生駒もいた方がいいと思ってな、だからありがとな」

「ははは、やっぱり我妻は面白いね」


 今日外に出てきてよかった。


「薫子さん遊びましょう!」

「はーい、円ちゃんが楽しそうで私も嬉しーよ」

「自分が変な態度でいたら駄目だって冷静になれたんです」

「そかそか、よしいくぞー」


 ただ、こうなってくると遠慮しがちな今城をよく見ておかなければならない。

 それとお礼は本を買うことになって、その気に入った本が入った袋を持ちながらにこにこしているのが今城だった。


「本をただで買ってもらえるなんてありがたいよ。く、クレープのことでもお世話になっちゃっているから少し引っかかるけど……」

「気にするな、俺の方がいつも世話になっているからな」


 だが、そう言うなら、そう動くなら先生にもなにか返さなければいけないことになる。

 あの人が素直に受け取るわけがないものの、月曜になったらぶつけてみよう。


「そ、そうかなあ。あと、こうして集まれているなら矢代先生も参加したかっただろうね」

「ああ、円がいるなら尚更だな」

「私的に我妻君といたいからのようにしか見えないけどな」


 俺と彼女では考え方が違うからこの点では延々平行線になる。

 前も同じように終わらせたかもしれないが、先生も勘弁してくれとなるだろうからやめてやってほしい。

 想像が得意でもあくまで自分と誰かにしてほしかった。


「今城は想像が得意だもんなー」

「そ、その顔はやめてぇ……」


 進んで言葉で相手を追い詰めたいわけではないからあの二人を追っていく。

 まあ、こうして人数が集まればいく場所は大体みんな同じだろう。


「円ちゃん、リズムゲームとかどうよ?」

「え、私……苦手なんですよね、それに誰も見ていないでしょうが恥ずかしいといいますか……」

「気にしない気にしない。我妻、円ちゃんは借りていくよー」

「おう」


 なんかもっとこう今城も誘ってもらいたいところだがな。


「今――近くないか?」

「げ、ゲームセンターとかにいったことがほとんどなくて……怖いし、それに音も大きいから……」

「あ、じゃあどこか掴んでいてもいいぞ」

「う、うん」


 平和そうなコインで遊べる筐体が多い方にいくか。

 コインゲームなら座れるのもいい。


「我妻君は何回も来たことがあるの?」

「そうだなあ、小さい頃に結構家族でいったりもしたぞ」

「私はいつも公園とかで遊んでいたんだ」

「んーどうしたって金を使うことになるし、それで満足できるならその方がいいだろ。お、きたきた」


 地道な作業が好きなのかねえ。

 やっていることはただ投入口にコインを突っ込んでいるだけなのに楽しい。


「今城、もしあれならあっちにソファがあるぞ、そこで本を読んでおくのもありだと思う」


 比較的静かだから本を読まなくても休める場所だ。


「ううん、ここでいいよ。我妻君がやってくれていたら同じように座っていても注意されることはないだろうから」

「でも、これだと今城だけ楽しめないだろ? 俺、そういうの嫌なんだよ」


 だからやっぱり生駒が連れていってくれると助かるのだ。

 ほら、写真を撮るとか女子でも楽しめる要素は多い。


「はは」

「な、なんだ?」


 またS属性全開にはならないでほしかった。


「我妻君の方が私のことを考えて動いてくれているよね」

「そうか? 俺は暇そうにしているところに本を貸してあげるみたいなことをできていないが。さっとできるところが格好いいよな今城は、ありがとな」


 今城が教室に残って本を読むような人でよかった。

 安定して話すことができればあの人も自分の仕事に集中できるようになる、みんなが幸せな状態だ。


「我妻――」

「いえーい!」


 いやいや、彼氏持ちがしていいことじゃないだろこれ。

 せめて後ろから体ごといくとしても今城にするようなことだ。


「日野に怒られるぞ」

「だって二人でイチャイチャしているからさーあっちにも我妻に構ってもらいたい子がいるんだけどー?」

「もう勝負は終わったのか」

「うん。まー私の全部負けでしたわ……」


 またやってしまったのか妹は。

 近づいたら正面からこっちにくっついてきて「なんとか勝てたよ」と、本人は満足気だったが。


「あのね、薫子さんが優しくて手加減をしてくれたんだ。それぐらいいちいち言われなくても分かるからね。だからこっちも考えて行動してあげなければいけなかったんだけど……」

「いやまあ、そこで円も手を抜いたら優しさとは言わないだろ」

「というか、負けず嫌いなところがあって負けたくなくてね」


 俺らに張り付いていたことも多い妹でも勝負事となれば俺らを圧倒していた。

 それが今回も出てしまったことになる。


「それに……」

「ん?」

「あっ、真剣にやっていたらお腹が空いちゃってね!」

「それならなにか食べにいくか、時間的にも丁度いいからな」

「うん!」


 普通に戻ってくれてよかった。

 妹が暗い顔のままでいたらそれだと駄目だったから助かったのだった。




「ふむふむ、意外と付き合いがいいんだねー我妻は」

「みんなで出てきているならそうするぞ」


 とはいえ、帰れと言われても言い訳をせずに帰るようにはしている。

 求められてもいないのにしつこく残ることは悪いことだ。


「だからこそ、特定の誰かを優先し始めたら面白いけどなー」

「生駒が日野にするみたいにか?」

「えー私はそんなに大介ばかり優先して生きてないでしょ。放課後はともかく、それまでは裕香達といるんだからー」


 本当はやめた方がいいが……。


「今城をもっと誘ってやってくれ。こういうことは誰かに言われてやることじゃないって分かっているんだが……」

「裕香を見ているとどうしても言いたくなっちゃう?」


 全部言わなくても生駒が察してくれてしまうのも問題だった。

 あと、結局は話しやすすぎることが悪い方に働いている。

 今城だって「え、我妻君に心配されるほど駄目じゃないけど」とか言いそうな件だ。


「ああ、俺からしたら誘われない寂しさを無理やり本で誤魔化しているようにしか見えないときもあるんだ」

「はは、りょーかい」


 もう一人の女子は……知らないからまあいまは今城のことだけを考えておけばいいか。


「お兄ちゃんって今城さんのことが好きなの?」

「お、どうなんだー? さあ答えろー」


 マジで今城がいまいなくて助かったな。


「遠慮ばかりしているから気になるというだけのことだよ。あと生駒」

「んー?」

「なんで生駒はそんなに話しやすいんだ? ある意味で厄介な存在なんだが」


 このままでいられると不味いのだ。

 それこそ、変な勘違いをして、変な勘違いをされて日野にぶっ飛ばされかねない。

 初めて話したときでも柔らかく相手をしてくれたぐらいなのにそんなことにはなってほしくなかった。


「ぷっ、あははっ、そんなことを言われたの初めてなんですけど!」

「笑いごとじゃないぞ、このままだと勘違いして――」

「惚れちゃう? でもー私には大介という大好きな男の子がいるからなー」


 ああ、これを日野に聞かせてやりたかったなあ。

 なんとなく、なんとなくだが、日野の前では借りてきた猫みたいになっていそうだった。

 まあ、それならそれで普段とのギャップで可愛く見えるもので、他の人では見えない生駒のそういうところを日野は独占できているわけだから仲が深まっていくだけかもしれないが。


「違う、友達だと勘違いしてしまうだろ」

「え、もう友達でしょ――え、もしかして裕香のこともまだ友達じゃないとか考えていたり……?」

「勝手に友達扱いにしたら迷惑だろ」

「うわあ……マジかぁ」


 なんでこうも俺の知り合いは先生みたいな顔をすることが得意なのか。


「ごめんね、待たせちゃって」

「聞いてよ裕香っ、我妻的に私達はまだまだ友達じゃないんだって!」

「そうなの? ふふ、我妻君らしいね」


 お、俺を変えたがっている今城がここで笑みを浮かべるだとっ?

 どうしたのか、今日は本を買ってもらえたから許してやるということなのだろうか。

 でも、流石に顔を合わせる度に貢ぐようなことはできないから次はないと。

 だから油断するなよとそう言われている気がする。


「おいおい、大人な対応ですな?」

「だって我妻君はいつもこうだもん、妹の円ちゃんならよく分かっているんじゃないかな」

「ということですが?」

「お兄ちゃんにはちゃんと『友達だからね?』と言わないと駄目なんですよ」


 正直、話し始めてすぐなら「そうかっ」と安心することはできない。

 相手が女子なら尚更のことだ、そのうえで彼氏持ちとかなら、はは、という感じで。


「ほーん。じゃー我妻っ、私達は友達だからねっ?」

「いいのか?」

「だからいいってっ、つかっ、遊びにいっているぐらいなのに友達じゃないなんて言うと思う!?」


 こういうところも含めて生駒も上手いんだよなあ。


「ありがとな」

「「「あー……」」」


 大丈夫、友達と言ってもらえたからと自分の方から近づいたりはしないよ。

 ただ、俺ばかりに得なことがあるのはいかがなものか。

 というか、今城にお礼をしたなら生駒にだってしなければならない気がする。


「生駒、なにか欲しい物とかないか?」

「んー百円ストアのでもいいから手鏡かなー」

「残る物でいいのか?」

「私のことを考えて買ってくれたり、作ってくれたりしたらなんでも嬉しーけどね」


 ここで真剣になりすぎるとロックオンされるし、本人がいいと言っているのだから従っておけばいいか。


「ありがとね」

「いや、こっちこそありがとう」


 流石にそろそろ終わりか。

 掃除をしたい気分になってきたのでここいらで解散になるのが一番だった。




「帰ってこないな」

「ね、もう二十時過ぎているのに」


 連絡もなし、こんなことはレアすぎる。

 なにか危ないことに巻き込まれたりしているわけではなければいいが……。


「先に食べるか」

「そうだね、勉強もしないといけないし」

「ちゃんと付き合うからな」

「うん、頑張るよ」


 食べ始めたばかりに帰ってきた、そんなタイミングの悪さが出てくることもなく、俺達は食べ終えて洗い物も終えた。


「円は先に入れよ」

「お兄ちゃんが先でいいよ」

「そうか? じゃあ、いってくるわ」


 冬だからといい加減にしないでしっかり洗って、しっかり温まらないとな。

 しかし、今日は結構の時間、外にいたから体が疲れている。

 下手をすると温かい湯のおかげで、せいで寝てしまう可能性が……?


「お兄ちゃん」

「おう、開けていいぞ」


 お、これは丁度いいタイミングだ。


「今日、一緒に遊びにいけてよかった」

「それならよかった、俺だけ楽しめたんじゃ意味がなかったからな」


 いや待て、少し冷えるか。

 長湯するつもりもないし、出てから話せばいい。


「もう出るわ」

「うん」


 床暖房とかが効いている浴室ならどうなるのか。

 なんて、ない物ねだりをしたって仕方がない。

 四人家族でも誰かが長く入れば誰かに迷惑がかかるからなくてよかったと考えよう。


「温かいからすぐに入った方がいいぞ、俺は部屋にいるから出てきたら寄ってくれ」

「今日はお兄ちゃんの部屋でやりたい」

「それならそれでいいぞ」


 寝ないようにしないとなあ。

 自分の部屋なのをいいことに寝転ぶと負けるから壁に背を預けて座っておくことにした。

 女子ならやっぱり風呂は長いということで三十分ぐらいは待つぐらいの覚悟で、あれ?


「お、お待たせ!」

「そんなに急がなくてもよかったのに。まあ、そこに座っていてくれ、タオルを持ってきて拭かないといけないから」


 いま風邪を引いたら不味いだろう。

 下から持ってきたタオルで妹の髪を拭いていると「えへへ~」となんか妹らしくなかった。

 終わって顔を見てみても真っ赤になってしまっているとかでもないし、風邪を引いているわけではないようだが……。


「あーそういえばお母さんいたよー?」

「生駒の真似か?」

「うん、だって薫子さんと話しやすいって言っていたからー」

「いや、円はこれまで通りの話し方にしてくれ。あれは生駒に合っているというだけで円には合った話し方があるんだ」


 でも、ああして柔軟に対応できるところが生駒のいいところだ、だからそういうところを真似しようとするのは悪いことではないか。

 止める前にしっかり考えるべきだった。


「そっか、お兄ちゃんはいつもの私が好きなんだね?」

「そうだ」


 勉強大好きというわけではないが、今日は俺もしっかりやるか。

 俺がただ同じところに存在しておくだけだとまた話すだけで終わりかねないから。


「もー!」

「え……?」


 さあ、これから頑張るかと気合を入れたところで背中に張り付かれて一気にどこかにいってしまった。

 あ、そういえば妹が複雑だった理由は生駒とかとこそこそ仲良くしていたからだ。

 それで取られるかもしれないと不安になっていたところで連れ出したのが始まりで……。


「俺ばかりが話していて悪かったよ円」


 スルー……これはまた逆戻りか……?

 大人の対応ができる妹だから問題になっていなかっただけなのか。


「あ、ちょ」


 電気を消されたせいで真っ暗になってしまった。

 その状態でも尚、こっちにはくっついたままだから段々と謎の時間に。

 とはいえ、このままだと二人とも睡眠不足状態で学校にいくことになってしまうからと部屋に戻ることを提案、が、言うことは聞いてもらえずに結局、二人で床で寝ることになってしまったのだった。

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