表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊
99/111

不帰の樹海㉗

総員三十二名。


蛙を食べた三人を埋葬した翌日。


部隊の空気は重かった。


誰も口を開かない。


空腹。


疲労。


そして死。


樹海に入ってから何度も経験している。


それでも慣れることは無かった。


昼過ぎ。


先頭を歩いていたリナが足を止めた。


「少尉」


クレールが顔を上げる。


「今度は何だ」


「これっす」


リナは地面を指差した。


そこには小さな穴があった。


何かを掘り返した跡だった。


クレールはしゃがみ込む。


周囲にも同じような跡が幾つもある。


「獣か?」


マルグリットが言う。


リナは首を振った。


「違うと思うっす」


「人間っすね」


「理由は」


「綺麗過ぎるっす」


確かにそうだった。


無造作ではない。


一定間隔。


しかも掘り返した後、丁寧に埋め戻されている。


「何を掘った」


誰も答えられない。


その時だった。


後方の兵士が声を上げた。


「こっちにもあります!」


全員が集まる。


そこには掘り出された根が転がっていた。


半分だけ。


残り半分は持ち去られている。


クレールが眉をひそめた。


「食料か」


「多分っす」


リナが答える。


「しかも慣れてるっす」


「慣れている?」


「はい」


リナは周囲を見回した。


「探して掘ったんじゃないっす」


「最初から場所を知ってたみたいっす」


沈黙。


その言葉は重かった。


誰も知らない森。


誰も分からない植物。


その中で。


食べられる根を探し当てる。


それは偶然ではない。


知識だ。


クレールは掘り返された跡を見つめる。


そして初めて思った。


自分達が追っている相手は。


単なる遭難者ではないのではないか。


総員三十二名。


足跡はまだ続いていた。


そして。


少しずつ新しくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ