表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊
97/106

不帰の樹海㉕

総員三十五名。


足跡を追い始めて二日。


幸いにも見失ってはいなかった。


むしろ逆だった。


追うほどに痕跡は増えていく。


折れた枝。


削られた樹皮。


焚き火の跡。


確実に人間がいた。


そして。


「少尉」


先頭のリナが足を止める。


今度は全員が警戒した。


リナが何かを見つける時は、大抵ろくな事にならない。


「今度は何だ」


クレールが疲れた声で聞く。


リナは少し離れた木の根元を指差した。


「これっす」


全員が集まる。


そこには。


小さな骨が転がっていた。


鳥ではない。


獣でもない。


見慣れたものだった。


「蛙か」


クレールが呟く。


骨だけになった蛙。


綺麗に解体されている。


「食ったんすね」


リナが言う。


「そのようだな」


マルグリットの表情が曇る。


蛙。


それは食料が尽きた時に仕方なく口にするものだ。


少なくとも正規軍では。


その時。


別の兵士が声を上げた。


「こっちにもあります!」


集まってみれば。


骨。


骨。


骨。


蛇。


蛙。


小型哺乳類。


ありとあらゆる生き物の骨が転がっていた。


クレールはしばらく無言だった。


やがて。


「友軍だな」


そう呟く。


「分かるのですか?」


マルグリットが問う。


クレールは骨を拾い上げた。


「我々と同じだ」


短い答えだった。


「余裕がある部隊はこんなものを食わん」


沈黙。


誰も否定しなかった。


彼女達も今なら分かる。


腹が減れば何でも食う。


それが樹海だ。


メローペは骨を見下ろす。


そして静かに言った。


「生きていると思うか」


クレールは周囲を見渡した。


痕跡は新しい。


古くない。


数日前。


いや。


もっと最近かもしれない。


「分かりません」


そう答えながらも。


その表情は少しだけ明るかった。


「ですが」


「少なくとも彼女達も、生きようとしていました」


総員三十五名。


部隊は再び歩き出す。


まだ姿は見えない。


だが。


追うべき相手が確かに存在している。


それだけは分かっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ