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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊
6/11

共同墓地

石の匂い。


乾いた風。


足元で砂が鳴る。


規則正しく並ぶ墓標。


同じ形。


同じ高さ。


違うのは、刻まれた名前だけ。


それが二百。


――


「……来てたんすね」


リナが声をかける。


振り返ったのは、一人の女。


中佐。


「ああ」


短く答える。


「毎年、この時期にはな」


視線は墓標のまま。


動かない。


リナも隣に立つ。


同じ方向を見る。


何も言わない。


――


風が吹く。


草が揺れる。


乾いた音が続く。


――


「……多いっすね」


ぽつりと言う。


中佐は答えない。


必要がない。


――


リナの視線が止まる。


見慣れた名前。


何度も見た。


忘れるはずがない。


――


「……あいつも、ここっすね」


中佐は小さく頷く。


「ああ」


――


沈黙。


――


「……止まれなかったっすね」


リナが言う。


中佐は静かに答える。


「ああ」


一拍。


「止まれなかった」


さらに。


「止まらなかった」


――


違いは分かっている。


だが、違う。


――


リナは目を閉じる。


背中の重み。


肩にかかる腕。


崩れそうな体。


それでも進む。


進ませる。


――


音。


呼吸。


足音。


遠くの叫び。


――


「……だから」


目を開く。


「止まるなって言ってるっす」


中佐は小さく笑う。


「らしいな」


――


しばらく、二人は何も言わない。


ただ、そこに立っている。


――


「……帰るっすか」


「ああ」


二人は背を向ける。


振り返らない。


振り返ったら、止まる。


それを知っている。


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