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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊
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第4王女

王宮の一室。


窓から差し込む光が、机を静かに照らしている。


メローペは書類から目を上げた。


「それで」


「例の件は?」


側近が一歩前に出る。


「姫が進めていた調査ですが」


「最適な人物が見つかりました」


「……誰?」


「ユーリイ・シーゲル」


メローペの視線が変わる。


「……彼?」


「ええ」


「現在は何でも屋のようなことをしています」


「時折、同僚だった男の元でパン屋の手伝いも」


メローペは椅子に体を預ける。


「……穏やかね」


「はい」


「でも」


視線を細める。


「使えるの?」


側近は即答する。


「既に三件、依頼を出しています」


メローペの視線が鋭くなる。


「勝手に?」


「姫の裁量の範囲内で」



「……内容は」


「追跡、回収、調査」


「それで結果は?」


「すべて完了」


間を置かずに続ける。


「いずれも、完璧に」


静寂が落ちる。


沈黙。


「いずれも単独です」


メローペは息を吐く。


「変わっていないのね」


「……第893小隊は?」


ふと思い出したように、メローペが言う。


側近の目がわずかに揺れる。


「既に、機能していません」


「……そう」


「生存者の多くは除隊」


「残った者も、散っています」


「現在の同番号部隊は存在しますが」


「別物です」


メローペは視線を落とす。


「そうでしょうね」


静かに言う。


「同じものが、そう簡単に残るはずがない」


一瞬だけ、沈黙。


「……あの森を越えた者たちよ」


小さく呟く。


側近は何も言わない。


メローペは再び顔を上げる。


「いいわ」


「彼に依頼する」


「直接、会う必要は?」


「不要よ」


即答。


「まずは仕事で見る」


「人となりは、その後でいい」


側近が一礼する。


「承知しました」


メローペは書類に視線を戻す。


だが、すぐには文字を追わない。


ほんのわずかに、考えるような間。


「……何でも屋、ね」


小さく呟く。


その声音は、わずかに興味を含んでいた。

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