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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義 豊


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決勝① Side アデルハイド

目の前の剣士が口を開く。


「先ほどは茶番を見せた。神聖な大会で無様を晒したこと、大変申し訳なく思っている」


ああ、


やはりあの時の、準決勝の試合は何かがおかしかったのだ。


そして、彼女は続けた。


「我はロイエンベルク侯爵家騎士団長、エルザ・ハーゲン大佐!」


事前に聞いてはいたが、


目の前に立っている人物を改めて認識した。


エルザ・ハーゲン。


王国を代表する剣士であり、


五年前の功績により、ロイエンベルク伯爵を侯爵位まで引き上げる立役者となった人物だ。


有名人に疎い私だって知っている。


「我の敗北は、ロイエンベルク騎士団全体の敗北!その名誉にかけて、全力で立ち合わせて頂く!」


その彼女が、


自身と所属する騎士団の名誉にかけて、全力で私に向かってくる。


気が付いたら声を出していた。


「待ってくれ」


そして、


私は自身の仮面に手をかけ、


投げ捨てた。


「私は、第四王女メローペ・アデス殿下近衛隊所属」


そして、


自らの名を名乗る。


「クロイツベルク男爵家四女、アデルハイト・クロイツベルク少佐」


目の前にいるエルザ・ハーゲン大佐が僅かに驚いた顔をする。


それも、ほんの僅かな間だ。


私は彼女に背を向け、


門の脇に立つリュシエンヌの下へと進む。


リュシエンヌは呆れた顔で言った。


「まったく!アデル、あとでお説教だからね」


すまん。


後で一緒にオーレリアに怒られてくれ。


サーベルを渡す。


代わりに彼女は、


私用に作られた試合用のショートソードとダガーを手渡してくれる。


私は黙ってそれを受け取り、


再び開始線上に立った。


「お待たせして申し訳ない」


二本の刃を構える。


「これが私の本来の戦闘スタイルだ」


目の前の戦士には、


全力で挑まなければいけない。


任務とか、


理屈ではない。


偽りの自分で相手をするのは、


この人にはしてはいけない。


エルザ・ハーゲン大佐の口角が上がり、


僅かに微笑む。


「感謝する」


剣を構えたハーゲン大佐の気迫を全身に受ける。


心が、


スーッと落ちていくのを感じた。


そして、


本来の自分に戻る感覚が全身に広がっていく。


右手のショートソードを握る。


左手のダガーを構える。


「いざ参る」


審判長が腕を振り上げたのが見えた。


「両者!はじめ!!」

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