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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義 豊


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駐屯部隊

「本当に!」


アールバ・ティーボ中佐は


思わず声を上げた


「本当に殿下だったのか?間違いはないのか」


白髪の見え始めた


中年の女性だった


森林第2駐屯部隊


その部隊長を務める人物である


報告のため


巡回隊から二名の兵士が


一足先に駐屯地まで走ってきていた


「は!」


兵士が姿勢を正す


「我々は直接お会いしたことはありませんが、事前に見せていただいた姿絵と瓜二つでありました!」


一度息を吸い


続ける


「加えて、身に着けておられた階級章は大佐のものでありました!」


「そうか……」


ティーボが


大きく息を吐く


「よくぞ無事で……」


一瞬


安堵の表情を浮かべ


すぐに


部隊長の顔へ戻った


「王都へ早馬を飛ばせ」


「は!」


「念のため二騎一組、三組だ」


「イエッサー!」


六騎の早馬が


駐屯地を飛び出していった


それだけではない


「二個小隊を出せ!」


「は!」


「報告を受けた地点へ向かわせろ。殿下と合流次第、こちらまで護衛するんだ」


「イエッサー!」


二個小隊が


駐屯地を出た


必要な手配は


全て終えた


後は


待つだけだった


だが


「…………」


ティーボは


天幕の前に立っていた


まだ


到着するような時間ではない


分かっている


それでも


天幕へ戻る気にはなれなかった


十歩ほど歩いて


止まる


反対へ歩いて


また止まる


街道の先を見る


誰もいない


また歩く


「中佐」


「何だ」


「まだだと思います」


「分かっている」


再び


街道の先を見る


「…………」


「…………」


「中佐」


「何だ」


「いえ……」


また


歩き始める


その繰り返しだった


やがて


遠くから


一人の兵士が駆けてきた


「中佐!」


ティーボが


足を止める


兵士が


その前まで駆けてくる


「報告します!」


敬礼する


「殿下が間もなく御到着です!」


ティーボが


街道の先を見る


およそ五百メートル


向かわせた兵士達が見える


その中央


彼女達に囲まれるように


こちらへ歩いてくる一団がいた


「……殿下」


ティーボは


その場で姿勢を正した


そして


待った


少しずつ


一団が近づいてくる


やがて


顔が分かる距離になる


事前に


何度も確認した姿絵


間違いない


第四王女


メローペ・アデス


ティーボは


大きく息を吸った


一団が


駐屯地へ到着する


前へ出る


敬礼した


「森林第2駐屯部隊隊長、アールバ・ティーボ中佐であります」


メローペを見る


「殿下、よくお戻りになられました」


メローペも


敬礼を返した


「ティーボ中佐、ご苦労であった」


ティーボが


敬礼を解く


「王城へ帰還の報告をしたい」


メローペが続ける


「早馬を貸してもらえないか」


「は!」


ティーボが答える


「殿下生還の報なら、既に早馬を六騎飛ばしております!」


「六騎?」


「念のため、二騎一組で三組を王都へ向かわせました」


「そうか」


メローペが


小さく頷いた


「ならば、もう一つ頼みがある」


「何なりと」


「私達と貴殿の部隊の者が出会った場所から、森へ向かって一キロほどの地点に、王国旗を掲げた複数の天幕があった」


「王国旗を?」


「ああ」


ティーボの表情が変わった


「そこに、およそ二十名の死体が転がっている」


「……死体?」


「調査をしてくれないか」


「は」


ティーボが


短く答える


メローペは


一度言葉を切った


「それと」


「は」


「その付近に、六名の者を埋葬している」


ティーボは


何も言わず


メローペを見る


「出来れば」


メローペが続ける


「王国へ連れて帰ってやりたい」


少しだけ


間があった


「可能か?」


ティーボは


姿勢を正した


「もちろんであります」


メローペが


小さく頷く


「頼む」


「は!」


ティーボは


すぐに振り返った


「調査隊を編成しろ!」


「は!」


「それと、遺体を収容する準備もだ!」


「イエッサー!」


兵士達が


動き出す


ティーボは


もう一度


メローペ達を見る


十九人


不帰の樹海から


生還した者達


その姿を見れば


何があったのか


聞きたいことはいくらでもあった


だが


まずは


帰ってきた者達を休ませること


そして


帰ってこられなかった者達を


連れ帰ることだった


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