治療の理由
部屋は静まり返っていた。
「あなた方は、既に不能者ではありません。」
その一言だけが、何度も頭の中を巡っている。
エンロは全員の表情を見渡し、静かに口を開いた。
「……その前に。」
「皆さん一人ひとりの状態について説明します。」
「原因は同じではありません。」
「それぞれ異なります。」
アン・ピノーが首を傾げる。
「原因って……。」
「俺たち、みんな不能者じゃねぇのか?」
「ええ。」
「ですが、不能者になった原因は一人ひとり違います。」
エンロは端末を操作した。
「アン・ピノーくん。」
「あなたは正常な生殖細胞……。」
アンは首を傾げた。
「……?」
「失礼しました。」
エンロは言い直す。
「皆さんの言葉で言えば、子種ですね。」
「その子種を正常に作ることができませんでした。」
「その異常は治っています。」
アンは呆然と立ち尽くした。
「……俺が?」
「はい。」
「次です。」
「モーリス・マスくん。」
モーリスは腕を組んだまま前へ出る。
「あなたは胎児期の発達異常でした。」
「……。」
「皆さんの言葉で言えば、金玉ですね。」
「その金玉が十分に育ちませんでした。」
「こちらも治療済みです。」
モーリスは反射的に股間へ手を当てた。
「……まじか。」
「はい。」
エンロは淡々と次の資料を表示する。
「ミューン・ジローくん。」
「あなたは――」
診察室には静かな説明だけが続いていく。
染色体異常。
発達異常。
炎症による障害。
外傷による損傷。
原因は誰一人として同じではなかった。
しかし。
エンロの最後の言葉だけは、全員に共通していた。
「それらの異常は全て完全に治っています。」
「現在、皆さんに生殖機能上の異常は認められません。」
一通り説明を終えると、ミークニーが静かに口を開いた。
「つまり。」
「私たちは全員、別々の病気だった。」
「だから、一人ひとり違う治療を行ったということですね。」
「その通りです。」
エンロは頷いた。
「全員を同じ方法で治療したわけではありません。」
「それぞれ診断し、それぞれに最適な治療を施しました。」
「だからこそ、時間も設備も必要だったのです。」
誰も口を開かない。
もう疑う者はいなかった。
エンロは一人ひとりの身体を診ている。
そして、その原因まで正確に言い当てた。
嘘をついているようには、とても見えなかった。
エンロは端末の画面を閉じる。
「さて。」
「皆さんの状態については、ご理解いただけたでしょうか。」
全員が静かに頷いた。
エンロも小さく頷き返す。
「では、本題です。」
「この事実を、女性方へお話しされますか。」




