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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義 豊


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治療済み

「エンロ、入るぞ!」


診察室の扉を開く。


資料を整理していたエンロが顔を上げた。


「おや、皆さん。」


「どうかされましたか?」


ユーリイは真っ直ぐエンロを見つめた。


「クエスから聞いた。」


「不能……いや、生殖機能不全は、この施設なら治療できるって。」


「本当なのか?」


エンロは不思議そうに首を傾げた。


「ええ。」


「治療できますよ。」


三人は黙ったまま顔を見合わせる。


エンロはさらに首を傾げた。


「……というか、既に治療しております。」


「お伝えしていませんでしたか?」


「「「え???」」」


診察室が静まり返る。


エンロは少し考え、


「もう一度申し上げます。」


「皆さんの生殖機能不全は、全て治療済みです。」


ユーリイは思わず一歩前へ出た。


「待って、待ってくれ。」


「はい?」


「詳しく聞きたい。」


「その前に、仲間たちを全員集めてもいいか。」


ミークニーも頷く。


「私たちだけで聞いていい話じゃありません。」


エンロは穏やかに頷いた。


「ええ、もちろんです。」


「本来であれば、皆さん揃った場で説明すべき内容でした。」


「私の配慮が足りませんでした。」


三人は顔を見合わせると、すぐに診察室を飛び出した。


◇


「なんだよ……。」


アン・ピノーは大きく欠伸をしながら現れた。


「俺の甘美なお昼寝タイムに……。」


ミューン・ジローは不機嫌そうに腹をさすった。


「お前はまだいいよ。」


「俺なんか大してる最中にトイレまで呼びにきやがって。」


ヨシーカ・ヤース兄弟も首を傾げる。


「「何だ?」」


「「誰か怪我でもしたんか?」」


「うっせぇ!」


タッカーが怒鳴る。


「黙って来い!」


モーリス・マスは不満そうに現れた。


「重要?」


「俺のかわいいアーダポルちゃんより重要なことがあるって言うのか?」


「ある。」


ユーリイは即答した。


「そんなものより、はるかに重要だ。」


モーリスは眉をひそめる。


「あ?」


ミークニーが静かに続けた。


「私たち全員の人生が変わる話です。」


モーリスは真顔になった。


「……お前がそう言うなら聞く。」


ユーリイは全員が揃ったことを確認すると、エンロへ視線を向けた。


「頼む。」


エンロは一同を見回した。


「先ほど、お三方にもお話ししましたが。」


「皆さんの生殖機能不全は、既に治療済みです。」


アン・ピノーが首を傾げる。


「なになに?」


「生殖機能不全って?」


モーリス・マスも腕を組む。


「何だよ。」


「俺のアーダポルちゃんの方が重要じゃねぇか。」


エンロは静かに言い換えた。


「皆さんが『不能者』と呼ばれる原因です。」


部屋が静まり返る。


全員がエンロを見つめた。


エンロはもう一度、はっきりと告げる。


「もう一度申し上げます。」


「あなた方は、既に不能者ではありません。」


ユーリイ、ミークニー、タッカーを除く全員が固まった。


そして――。


「「「「「えーーーーーー!!!!!」」」」」



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