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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊


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ライブラリーシステム

エンロは情報センターの奥へ歩いていく。


そこには昨日タッカーが見ていたものより、一回り大きな白い机が並んでいた。


机の中央には、一枚の黒い板が埋め込まれている。


「これがライブラリーシステム。」


「ここに残された知識へ触れる入口だよ。」


「昨日、タッカー君が見ていたレシピも、この中に入っている。」


「全部ここから?」


タッカーが目を丸くする。


「そう。」


「料理も。」


「医学も。」


「農業も。」


「鍛冶も。」


「建築も。」


「歴史も。」


「もちろん、この村に伝わる知識もね。」


エンロは机へ手を添えた。


黒い板が淡く光る。


『利用者を確認しました。』


『ユーリイ・シーゲル。』


『ライブラリーシステムを起動します。』


黒い板へ文字が浮かび上がる。


ユーリイは思わず息を呑んだ。


「昨日のより……。」


「少し大きいだろう?」


エンロが笑う。


「昨日タッカー君が使っていたのは貸出用。」


「こちらは情報センター本体なんだ。」


「貸出用?」


「うん。」


「あとで一人一台貸そうと思っている。」


「部屋でも使えるからね。」


タッカーが嬉しそうに身を乗り出す。


「えっ!」


「じゃあ夜も見られるのか!」


「もちろん。」


「ただし。」


エンロは人差し指を立てた。


「寝不足は禁止。」


「健康第一だからね。」


「……。」


「……。」


「分かった。」


少し間を置いて答えるタッカー。


その返事にユーリイが笑う。


「絶対分かってないな。」


「いや、分かってる!」


「昨日だって途中で寝た!」


「寝落ちしただけだろ。」


「同じだ!」


エンロは思わず吹き出した。


「ははは。」


「本当に仲がいいね。」


タッカーは咳払いを一つして話を戻す。


「それで……どうやって使うんだ?」


「簡単だよ。」


エンロは黒い板へ向かって言った。


「クエス。」


「パン。」


『検索します。』


一瞬で画面が切り替わる。


そこには何十、何百というパンの写真が並んでいた。


「うおぉぉ!」


タッカーが思わず声を上げる。


「昨日見たやつだ!」


「まだこんなにあるのか!」


『検索結果、一万二千八百四十三件です。』


「いち……。」


「何だって?」


タッカーの口が止まる。


ユーリイも苦笑した。


「全部見る前に寿命が来るな。」


「いや!」


「見る!」


「お前なぁ……。」


エンロは肩をすくめる。


「料理だけじゃないよ。」


「試してごらん。」


「知りたいことを話すだけでいい。」


ユーリイは少し考えた。


何を調べればいいのか分からない。


ふと視線が窓の外へ向く。


帰らずの樹海。


あの深い森。


そして静かに口を開いた。


「クエス。」


「ナストロンド。」


『検索します。』


黒い画面が静かに切り替わった。


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