古代遺跡①
闇だった。
夢を見ていた気がする。
遠くで誰かが話している。
男とも女ともつかない声。
言葉は分からない。
だが、不思議と恐怖はなかった。
静かだった。
まるで深い水の底に沈んでいるような感覚。
身体が重い。
手も足も動かない。
それでも、どこか温かかった。
……
……
……
ふっと、光が差した。
眩しい。
ゆっくりと瞼を開く。
白い。
天井も、壁も、床も。
見たことのない滑らかな白。
石ではない。
木でもない。
布でもない。
鼻をくすぐる、微かな薬品のような匂い。
「……ここは」
掠れた声。
喉が焼けるように痛い。
起き上がろうとして、身体が思うように動かない。
「無理をしない方がいいよ。」
穏やかな声だった。
聞き覚えはない。
だが、敵意も感じない。
視線を向ける。
そこには、一人の男が立っていた。
年齢は三十代ほどに見える。
白い衣服。
どこの国のものとも違う、不思議な服装。
整った顔立ち。
穏やかな笑み。
「目が覚めたようだね。」
男はそう言って微笑んだ。
「……誰だ。」
「自己紹介は後にしよう。」
男は肩をすくめる。
「まずは安心してほしい。」
「君たちは助かった。」
その一言で、
張り詰めていた何かが切れた。
「……皆は。」
男は静かに頷く。
「全員生きている。」
その瞬間。
ユーリイは大きく息を吐いた。
知らないうちに握り締めていた拳から力が抜ける。
「よかった……。」
その呟きを聞き、
男は少しだけ目を細めた。
「やっぱり、君はそう言う人なんだね。」
ユーリイは怪訝そうに男を見る。
「……?」
男は笑って首を振った。
「いや、独り言さ。」
そして部屋を見回す。
「ああ、それと一つ。」
「君たちの武器は預かってあるよ。」
「ここを出る時には返すから安心して。」
ユーリイは一瞬だけ眉をひそめた。
だが、不思議と反発する気にはなれなかった。
あれだけの傷を負って、
武器まで持って眠っていた方がおかしい。
男の言葉にも、不自然な圧はない。
「そうだ。」
男は思い出したように微笑む。
「私の名前はエンロ。」
「この施設の管理を任されている者だ。」
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