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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊


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118/125

不帰の樹海㊻

角笛が樹海に響く。


一度。


二度。


三度。


「本隊か……!」


クレールが剣を抜く。


「迎え撃つ! 王女殿下を中央へ!」


近衛がすぐにメローペを囲む。


その周囲を不能部隊と救援部隊が固めた。


木々の間から敵兵が姿を現す。


一人。


二人。


五人。


十人。


まだ続く。


「いたぞ!」


「王女だ!」


怒号が樹海を震わせる。


「来るぞ!」


剣がぶつかる。


槍が突き出される。


雨で滑る足場。


互いに思うようには動けない。


それでも敵は数で押してきた。


ユーリイは短剣を抜く。


正面の敵兵へ踏み込む。


一人。


返す刃で二人目。


三人目が斬りかかる。


横からクレールの剣が弾いた。


「前だけ見ろ!」


「了解!」


短い言葉だけで十分だった。


戦場では説明はいらない。


後方。


ナターシャが弓を引く。


放つ。


敵兵の肩へ矢が突き刺さる。


すぐに二本目。


三本目。


矢筒はもう半分以下だった。


「左だ!」


ロスリーが叫ぶ。


イツォーが飛び込み、敵を押し返す。


その隙にアンが負傷兵を後方へ引きずった。


戦線は何とか保たれていた。


その時だった。


一人の敵兵が倒木を回り込み、王女の背後へ走る。


「殿下!」


オーレリアが振り返る。


間に合わない。


ナターシャが動いた。


弓を投げ捨てる。


短剣を抜く。


敵兵へ体当たりするように飛び込んだ。


刃が交わる。


鈍い音。


敵兵の剣がナターシャの脇腹を深く裂いた。


それでもナターシャは止まらない。


短剣を突き立てる。


敵兵は崩れ落ちた。


「ナターシャ!」


ロスリーが駆け寄る。


ユーリイも飛び込む。


ミークニーが膝をつく。


傷を見る。


血は止まらない。


ナターシャは小さく息を吐いた。


「……殿下は。」


「ご無事だ。」


ロスリーが答える。


ナターシャは安心したように目を閉じかける。


「よかった……。」


ミークニーは静かに首を振った。


ユーリイは傷口を押さえ続ける。


諦めない。


最後まで。


それが自分の役目だった。


遠くで再び角笛が鳴る。


敵はまだ来る。


雨は止まない。


そして誰も、その場を離れることができなかった。


皆様の応援が、執筆の力になります。

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