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遺伝子の小さな箱庭  作者: 妙義豊


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不帰の樹海㉚

【お知らせ】


本日の更新ですが、予定していた時間に間に合わず、遅れての投稿となりました。


楽しみにお待ちいただいていた皆様には申し訳ありません。


また、不帰の樹海編についてですが、気が付けばかなりの大工事になってしまいました。


当初は一部修正のつもりだったのですが、流れや描写、登場人物の行動などを見直していくうちに、ほぼ作り直しと言っていいレベルまで手を入れています。


そのため、既に読まれた方もお手数ですが、不帰の樹海編については改めて最初から読み直していただけると嬉しいです。


今後はこれまで通り、昼と夜の定時更新へ戻る予定です。


遅筆な作者ではありますが、最後まで書き切るつもりでおりますので、引き続き『遺伝子の小さな箱庭』をよろしくお願いいたします。

総員三十二名。


「待て」


低い声だった。


聞き慣れない声。


その場の全員が固まる。


クレールも。


マルグリットも。


オーレリアも。


そしてメローペも。


一瞬。


何を聞いたのか理解できなかった。


男の声。


そんなはずはない。


ここは樹海だ。


しかも軍隊。


男がいるはずがない。


「少尉……」


リナが小さく呟く。


クレールは答えない。


答えられなかった。


焚き火の向こう。


一人の兵士が立ち上がる。


いや。


兵士ではない。


男だった。


全員が息を呑む。


焼けた肌。


伸びた髪。


薄汚れた軍服。


利き腕には個人認証番号。


そして、その上から横一文字に刻まれた焼印。


腰には二本の短剣。


一本は多くの兵士が携行する見慣れたダガーナイフ。


しかし、もう一本は違った。


王国では見かけない形の短剣だった。


柄は長く、鞘はわずかに反っている。


クレールは思わず眉をひそめた。


王国軍の制式装備ではない。


男は周囲を見回した。


敵意は無い。


だが警戒はしている。


それはお互い様だった。


沈黙。


先に口を開いたのは男の方だった。


「王国軍か?」


クレールが我に返る。


「そうだ」


短く答える。


男は小さく頷いた。


「なら良かった」


その言葉で。


焚き火の周囲にいた兵士達が少しだけ力を抜いた。


だが。


クレール達は違った。


視線は男へ釘付けになっている。


男がいる。


しかも一人ではない。


焚き火の周囲だけでも数人。


全員が軍服を着ていた。


クレールは目を見開く。


聞いたことがある。


王国には男だけで編成された部隊が存在すると。


士官学校時代。


酒の席で聞いた噂話だった。


誰も本気にはしていなかった。


都市伝説の類だと思っていた。


だが。


目の前の男達は違う。


先頭の男と同じ利き腕の番号の上に刻まれた印。


全員が武装している。


そして何より。


その立ち姿に怯えが無い。


クレールは息を呑んだ。


噂は本当だったのか。


その時だった。


後方から声が飛ぶ。


「おいユーリイ!」


「友軍か!?」


別の男だった。


さらにもう一人。


また男。


クレールは絶句した。


多い。


思ったより遥かに多い。


友軍。


その言葉は理解できる。


だが。


目の前の光景は理解できない。


男達が。


当然のように。


軍隊を作っていた。


総員三十二名。


そして。


第4王女メローペ率いる生存者達は、


初めて第893小隊の生存者と対面した。


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