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捨てられた令嬢は隣の貧乏帝国を買い取る 〜身勝手な婚約破棄、一パーセントの誤差もなく差し押さえますわ〜  作者: 冷泉院 麗華


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第24話:監査官セラフィナの最終通告

「……まあ。大聖堂の地下に、これほど大規模な『地下工場』を隠し持っていらしたなんて。おーっほっほ! 教皇様は、信仰よりも製造業に才能がおありだったようですわね」


 轟音と共に大聖堂の床が崩落し、わたくしたちの眼下に広がったのは、およそ神聖さとは無縁の異様な空間でした。

 無数の真鍮製のパイプが血管のようにのたうち回り、巨大な歯車が不快な金属音を立てて噛み合っている。その中心に鎮座するのは、どす黒い魔力を排出し続ける、心臓のような形状をした巨大な魔導炉――。


「……これが、神の奇跡の正体。……嘘だ。こんな、汚らわしい機械が……!」


 最高聖務監査官ルチアが、銀の帳簿を抱えたまま、瓦礫の端で膝を突きました。

 彼女の氷のような冷静さは粉々に砕け、その瞳には、信じていた世界が崩壊していく絶望だけが宿っています。


「ルチア様。監査官を自称するなら、表面上の数字(教義)だけではなく、現場げんぶつを確認すべきでしたわ。……マリアンヌ、CEOフェルム。この醜悪な機械の『原材料』を特定なさい」


「既に分析済みです、お嬢様。……この炉は、教皇庁が『聖地』として封印していた異界の割れ目から、低質な魔力残滓を吸い上げ、無理やり純化させています。……ですが、その過程で一パーセントの『不純物』を濃縮し、地下水脈へ不法投棄している形跡がありますわ」


 マリアンヌの冷徹な報告。わたくしの「絶対金感」が、炉から溢れ出す魔力の「誤差」を捉えました。

 それは、聖女エラが振りまいていたあの「死のパン」と同じ、生命を削る毒の響き。


「おーっほっほ! 『祈り』という名の無形資産を募りながら、実態は『異界の廃棄物』を再加工して売り捌いていた……。教皇庁の正体は、神の代理人などではなく、ただの悪質な『不法投棄業者』でしたわね」


「……黙れ! 黙れ黙れ!」


 暗闇の奥から、影を纏ったサイラスが現れました。

 彼の算盤は既に砕け散っていますが、その手には先ほどの「漆黒の鍵」が握られ、魔導炉の心臓部に繋がっています。


「セラフィナ・フォン・アストレア……! 確かにこれは、我々が犯した『負債』だ。だが、今さらこの炉を止めればどうなるか、計算できるか!? 大陸の魔力流通の四割は、この工場が供給する偽造魔力で支えられているんだ!」


「……なんですって?」


「この炉を差し押さえれば、明日から大陸中の魔導灯は消え、結界は解け、経済は死ぬ! お前の愛する帝国とやらも、魔力破産で心中することになるぞ! さあ、監査官様。この『巨大な欠損』を前に、お前は正論という名のペンを折らずにいられるかな!」


 サイラスの狂気に満ちた叫び。

 ルチアが顔を上げ、わたくしを縋るような、あるいは呪うような瞳で見つめました。

 そう、これが教皇庁が隠し持っていた最大の盾。

 「あまりに巨大すぎて潰せない(Too Big to Fail)」――。


 ……ですが。


「おーっほっほっほ! ……サイラス様。あなた、わたくしを誰だと思っていて?」


 わたくしはゆっくりと、漆黒のドレスの裾を翻し、魔導炉の目の前へと進み出ました。

 アルリック陛下が静かに剣を抜き、わたくしの背中を守るように立ち塞がります。


「セラフィナ。この『ガラクタ』、壊しても構わないか? 相場の混乱など、私の武力と君の知略で買い叩けば済む話だ」


「ええ、陛下。頼もしいお言葉ですわ。……サイラス様、お聞きなさい。四割の市場シェア? そんなもの、ただの『独占の怠慢』ですわ。わたくしには、この腐った偽造貨幣に代わる、圧倒的な『新規資本』があるとお忘れかしら?」


 わたくしは懐から、一粒の純度の高い「アルビオン結晶」を取り出しました。


「あなたがたが数千年もかけて隠蔽してきたこの負債……本日、わたくしが『債務整理』して差し上げますわ。……ルチア様、立ちなさい。あなた、まだ『監査官』の職を解雇した覚えはございませんわよ?」


「……え……?」


「この街の、いえ、大陸の新しい魔力基準スタンダードを、わたくしと共に策定なさい。……教皇庁という名の倒産企業には、もう用はございませんの。これからは、わたくしの帳簿が世界の理となりますわ!」


 わたくしは「アストレアの帳簿」を高く掲げ、魔導炉の心臓部に向けて最終通告を突きつけました。


「本日、聖都ソルレウスならびに教皇庁の全機能を『破産宣告デフォルト』いたします! ……マリアンヌ、強制執行(物理的破壊)を開始なさい!」


「畏まりました。……フェルム、最大出力。監査の鉄槌を叩き込みますわ」


 陛下の剣が蒼い閃光を放ち、魔導炉の核を貫きました。

 砕け散る歯車、霧散する黒い魔力。

 聖域の欺瞞が、瓦礫と共に崩れ去っていく。


 教皇庁の崩壊。

 それは、令嬢が「世界の管理者」として君臨するための、あまりに華やかで非情な、第一歩に過ぎませんでした。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございますわ!


教皇庁という「あまりに巨大すぎて潰せない」と言われた組織を、

「代わりがあるから潰して構いませんわ」と一蹴するセラフィナ様……。

この圧倒的な「損切り」のカタルシス、楽しんでいただけましたかしら?


ルチア様を絶望から救い、自分の陣営に引き込もうとするセラフィナ様の「有能な人材への投資」。

そしてついに、聖都の欺瞞が物理的に粉砕されましたわ!


次回、第25話「新しい『金』の音が聞こえる市場」。

第2部、ここに完結!

教皇庁の崩壊が大陸にもたらす「魔力恐慌」。

それすらも予測済みだったセラフィナ様が、世界を救うための「新通貨発行」を宣言いたします。

大陸全土が彼女の支配下に入る、伝説の瞬間をお見逃しなく!


もし「セラフィナ様の決断、痺れたわ!」と思ってくださったなら、ぜひブックマークを!

そして、下の【☆☆☆☆☆】を、崩壊する大聖堂から立ち上る希望の光のように輝く【★★★★★】にして、応援してくださると嬉しいですわ!


皆様の評価という名の「資産」が、わたくしの筆を動かす最高のリターンですのよ。

それでは、次回もお楽しみに。ごきげんよう!

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