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捨てられた令嬢は隣の貧乏帝国を買い取る 〜身勝手な婚約破棄、一パーセントの誤差もなく差し押さえますわ〜  作者: 冷泉院 麗華


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第23話:聖域の貸借対照表、全面開示の時間ですわ

「……『神聖監査』? おーっほっほっほ! 面白いことをおっしゃるのね。監査とは、真実を明らかにするためのもの。隠蔽を『神聖』という言葉で飾るためのものではありませんわ、ルチア様」


 大聖堂の階段を舞台に、わたくし――セラフィナ・フォン・アストレアの蒼い魔力と、最高聖務監査官ルチアの放つ白銀の光が激突し、パチパチと空間を焦がすような不協和音を奏でています。

 ルチアは銀の帳簿をめくり、その冷徹な声を聖都全域に響かせました。


「セラフィナ様。あなたの持ち込んだ『アルビオン』は、聖域の魔力秩序を乱す不当な外部資本です。教皇庁典範第七〇二条に基づき、この街における全ての商行為、ならびに魔力供給を『神聖封鎖サンクション』いたします」


 ルチアが銀の帳簿に指を走らせると、白銀の魔力が鎖のように実体化し、わたくしが再点灯させた魔導灯や、民衆の手にあるアルビオン債券に巻き付きました。

 一瞬、蒼い光が翳りを見せます。


「な……光が、消えるのか!?」

「やっぱり神様には逆らえないんじゃ……」


 民衆の間に、不安という名の「売り気配」が広がります。

 ……おーっほっほ! 本当に、教科書通りの『岩盤規制』ですこと。


「ルチア様。あなた、その『典範七〇二条』を根拠に封鎖を宣言なさいましたわね? ですが、その条文、一パーセントの狂いもなく読み直されたことはありますかしら?」


「……何ですって?」


「マリアンヌ。教皇庁の『原典会計資料』、第百四巻の三十二ページを投影なさい」


 わたくしの背後で、マリアンヌが音もなく端末を操作しました。

 空中に浮かび上がったのは、埃を被った古い羊皮紙の写し。そこには、三百年前に当時の教皇と、アストレア公爵家の先祖が交わした『土地利用に関する覚書』が記されていました。


「典範七〇二条の『神聖封鎖』の権利は、あくまで『教皇庁が土地の完全な所有権を有している場合』にのみ適用されるもの。……ですがルチア様。あなたが今立っているその大聖堂の敷地、ならびに聖都の地下導管……それらはすべて、三百年前の『長期リース契約』に基づいてアストレア家から貸し出されているものに過ぎませんわ」


 わたくしは扇子で、白亜の大聖堂を優雅に指し示しました。


「そしてそのリース契約、更新手続きが『百年前』に途絶えておりますの。……つまり、教皇庁は現在、わたくしの土地を『無断占拠』している不法占拠者。不法占拠者に、正当な所有者であるわたくしの商売を止める権限など、一パーセントも存在しませんわ!」


 静寂。

 ルチアの銀の帳簿が、ガチリと音を立てて止まりました。

 彼女の氷のような瞳に、初めて明らかな「計算違い」への動揺が走ります。


「リース契約だと……? バカな、聖域は神から与えられた不変の土地だ!」


「土地に神の刻印など押されておりませんわ。あるのはただ、代々の税の記録と、わたくしの先祖が支払った『地代』の領収書だけ。……ルチア様、監査官を自称するなら、現場フィールドの権利関係くらい正確に把握しておきなさいな。これだから、現場を知らない官僚エリートは困りますのよ」


「セラフィナ。……あちらの白銀の鎖、法的根拠を失って『強制解除』されたようだが。……斬り捨てていいか?」


 アルリック陛下が、精霊鋼フェルムを抜き放ちました。

 法的な「所有権」という盾を失ったルチアの白銀の光は、もはや無防備な残像に過ぎません。


「ええ、陛下。……不法占拠者の『私物』は、すべて撤去クリーニングして差し上げて?」


 陛下の一振りが、空中に浮遊していた白銀の鎖を塵へと変えました。

 再び聖都を支配するのは、わたくしのアルビオンの蒼い光。


「……っ。認めません。例え土地の権利が曖昧であろうとも、この聖都の下を流れる『根源魔力』の制御権は、教皇庁だけが持っている!」


 ルチアが激昂し、銀の帳簿を限界まで展開しました。

 その時。

 大聖堂の地下深くから、聞いたこともない重低音が響き渡りました。

 それは魔力の音ではなく、巨大な『機械』が軋む音。


「……あら? おーっほっほ! ついに尻尾を出しましたわね」


 わたくしの「絶対金感」が、地下から溢れ出す魔力の「誤差」を捉えました。

 それは、祈りでも奇跡でもない。

 人工的に、そして組織的に『魔力を偽造』し続けてきた、巨大な「物理的装置」の振動。


「ルチア様。あなたが隠していた『裏帳簿』の正体……。どうやら数字ではなく、あそこに『現物』として鎮座しているようですわね」


 大聖堂の床に大きな亀裂が入り、そこから不気味な鈍色の蒸気が噴き出しました。

 

 聖域の美しさという名の『粉飾』。

 その化けの皮が剥がれる瞬間は、すぐそこまで来ておりますわ。

お読みいただき、ありがとうございますわ!

「神様の土地」を「期限切れのリース物件」として差し押さえるセラフィナ様……。

どれほど神聖な言葉で飾られても、彼女の前では「未払いの請求書」一枚に勝てませんの。


ルチア様という強敵を「法的な不備」で揺さぶり、ついに聖都の地下に眠る「魔力偽造装置」の存在まで辿り着きました。

教皇庁という世界最大の銀行が、一体何を「刷って」いたのか……。


次回、第24話「監査官セラフィナの最終通告」。

ついに姿を現す地下の巨大装置。そして、教皇庁が数千年にわたって隠蔽してきた「世界の債務超過」の真実が明らかになりますわ。

セラフィナ様が、世界そのものに「破産宣告」を下す瞬間をお見逃しなく!


もし「リースの期限切れで論破するセラフィナ様、最高に賢い!」と思ってくださったなら、ぜひ「ブックマーク」を!

そして、下の【☆☆☆☆☆】を、教皇庁の偽造魔力ではなく、わたくしたちの純粋な熱意のように輝く【★★★★★】にして、応援してくださると嬉しいですわ!


皆様の評価という名の「資産」が、第1部完結から再開したこの物語を、さらなる高みへと押し上げますの。

それでは、次回もお楽しみに。ごきげんよう!

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