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捨てられた令嬢は隣の貧乏帝国を買い取る 〜身勝手な婚約破棄、一パーセントの誤差もなく差し押さえますわ〜  作者: 冷泉院 麗華


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第22話:神の祈りに『手数料』を上乗せして差し上げますの

「……まあ。これが神の慈悲を受けるための『正規料金』ですの? おーっほっほっほ! この聖都の物価設定、もはや狂気という名のインフレを引き起こしておりますわね」


 聖都ソルレウスの中央、天を突く白亜の大聖堂前。

 わたくし――セラフィナ・フォン・アストレアは、黄金の寄付箱を掲げて跪く信徒たちと、それを冷然と見下ろす司教たちの前に立ちはだかりました。


 そこでは今、「救済の特別祈祷」という名のオークションが行われていました。

 病に苦しむ親のため、飢えた子供のため……。民衆はなけなしの金貨を箱へ投げ入れ、それと引き換えに、司教が形ばかりの杖を振って「神の光(魔力)」を微量だけ分け与える。


「止まりなさい、異邦の娘よ! 今は神聖なる祈りの時間。これ以上の無礼は、魂の破産を招くぞ!」


 赤紫の法衣を纏った司教が、わたくしを睨みつけました。


「『魂の破産』? ふふ、面白い冗談ですわ。ですが司教様。わたくしの帳簿によれば、先に破産しているのは教皇庁の『倫理観』の方ではありませんこと? ……マリアンヌ、こちらの『祈り』の約定率を算出しなさい」


「承知いたしました、お嬢様。……現在、この広場で行われている祈祷の魔力変換効率、ならびに成就率は……一パーセントの誤差もなく『零点零一パーセント』以下です」


 マリアンヌが魔導端末を操作すると、大聖堂の壁面に巨大な「収支グラフ」が投影されました。

 信徒たちが投げ入れた金の総額に対し、実際に「神の光」として還元されたエネルギーの微々たる量……。その差額は、あまりにも絶望的でした。


「ご覧になって。皆様が捧げた金貨百枚のうち、神の元へ届いているのは、たったの一枚分。……残りの九十九枚は、この大聖堂の豪華な装飾と、司教様方の肥え太ったお腹の中に『事務手数料』として消えていますわ」


「な……何を馬鹿な! これは神聖なる務めのための必要経費だ!」


「九十九パーセントの中抜きが必要経費? おーっほっほ! それを世間では『悪徳仲介業』と呼びますのよ。司教様、あなた方は神と民の間で、世界一高価な『通信料』を掠め取っているに過ぎませんわ」


 広場に集まった信徒たちから、どよめきが広がります。

 わたくしは扇子を閉じ、司教の鼻先に突きつけました。


「今日から、この聖都における『祈りの市場』を自由化いたします。……アルリック陛下、あそこの『非効率な集金箱』、撤去してくださる?」


「ああ、安い御用だ。……私の帝国マーケットを汚す不正経理は、私が直々に掃除しよう」


 陛下が一歩踏み出すと、その圧倒的な武圧だけで、金の箱を抱えていた衛兵たちが腰を抜かしました。


「これより、アストレア商会が『祈りの適正価格』を提示いたします。……皆様、教皇庁への寄付は今すぐお止めなさい。わたくしの発行する『アルビオン・ボンド(魔力債券)』を購入すれば、手数料はわずか三パーセント。しかも、魔力の還元は一パーセントの狂いもなく即座に執行されますわ!」


「お、おい! 本当か!? あの光……教会の薄暗い光より、ずっと温かいぞ!」

「司教に金を渡すより、令嬢様に預けた方が得じゃないか!」


 民衆の足が、一斉に大聖堂から離れ、わたくしの元へと向かいます。

 「信仰」という名の依存を、「投資」という名の選択へと書き換える。

 教皇庁が数千年にわたって独占してきた『救済の権利』が、今、紙屑同然に暴落していく音が聞こえました。


 しかし。


「……ふふ。理屈だけで、この聖域の根幹を揺るがせると思っているのですか? セラフィナ・フォン・アストレア様」


 大聖堂の奥、深い影の中から、冷徹な鈴の音のような声が響きました。

 現れたのは、漆黒の修道服に身を包み、腕に銀の帳簿を抱えた一人の女性。

 その瞳は、サイラスのような狂信でもなく、司教のような強欲でもない。……ただ、極北の氷のような「無機質な正しさ」を宿していました。


「……あら。教皇庁にも、ようやく『計算のできる人間』が残っていたようですわね」


 わたくしの「絶対金感」が、初めて、明確な『敵意ある論理』を捉えました。


「初めまして。私は教皇庁・最高聖務監査官、ルチア。……あなたの持ち込んだ『自由市場』という名の劇薬。……それがどれほどこの大陸の秩序を破壊する不良債権か、私の一パーセントの誤差もない『神聖監査』で証明して差し上げましょう」


 ルチアが銀の帳簿を開くと、聖都全体の魔力回路が、わたくしのアルビオンに抗うように、冷たい白銀の光を放ち始めました。


 おーっほっほっほ!

 素晴らしいですわ! 世界一の独占企業、教皇庁。

 その「最高財務責任者(CFO)」を相手に、どちらの帳簿が正しいか……。

 徹底的に、買い叩いて差し上げますわよ!

お読みいただき、ありがとうございますわ!

「祈りの手数料」という概念で、教皇庁の不当な中抜きを暴くセラフィナ様……。

信仰をビジネスとして解体するその手腕、スカっとしていただけましたかしら?


しかし、ついに現れた強敵、聖務監査官ルチア。

彼女はサイラスのような感情的な敵ではなく、セラフィナ様と同じ「数字」を武器にする女。

聖都を舞台にした、史上最大の「会計戦争」が始まりますわよ!


次回、第23話「監査の鉄槌は、祈りの声より高く響きますの……。あら、失礼。第23話『聖域の貸借対照表、全面開示の時間ですわ』」。

ルチアが仕掛ける「聖なる法的拘束」に対し、セラフィナ様がどう立ち向かうのか……。

二人の「計算機令嬢」による、知の頂上決戦をお見逃しなく!


もし「ルチアとの対決、ワクワクするわ!」と思ってくださったなら、ぜひ「ブックマーク」を!

そして、下の【☆☆☆☆☆】を、セラフィナ様が掲げる黄金の帳簿のように輝く【★★★★★】にして、わたくしを応援してくださると嬉しいですわ!


皆様の評価が、わたくしの「執筆資産」を最大化いたしますの。

それでは、次回もお楽しみに。ごきげんよう!

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