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捨てられた令嬢は隣の貧乏帝国を買い取る 〜身勝手な婚約破棄、一パーセントの誤差もなく差し押さえますわ〜  作者: 冷泉院 麗華


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第20話:教皇様、あなたの『神』を競売にかけてもよろしくて?

「……まあ。そんな煤けた煙のようなものが、あなたがたの『神』の正体ですの?」


 鳴動する大地。亀裂の入った石畳から溢れ出したのは、吐き気を催すほど濃密な、漆黒の魔力でした。

 サイラスが掲げた「黒い鍵」に応呼し、聖都サン・ヴァロールの地下に眠っていた「負の遺産」が、実体を持たない巨大な異形の影となって天空を覆います。


 それはかつて、教皇庁が「奇跡」を捏造するために切り捨て、隠蔽し続けてきた、何万という信徒たちの『祈りの残滓ごみ』。


「笑っていられるのも今のうちですよ、セラフィナ様。これこそが教皇庁の真の帳簿……。数千年に渡り、救われなかった魂たちが積み上げた『絶望という名の負債』だ。管理不能となったこの膨大なエネルギーに、あなたの数字が通用するか!」


 サイラスが狂気を孕んだ瞳で叫びます。

 黒い影が咆哮し、聖都を照らし始めていたわたくしの「アルビオン」の光を食い破ろうと襲いかかりました。


「お嬢様、危険です! 予測魔力値が測定不能域に達しています!」


 マリアンヌが前に出ようとしますが、わたくしはそれを扇子一つで制しました。

 おーっほっほっほ!

 管理不能? 不良債権?

 そんな言葉、わたくしの前で軽々しく使わないでくださるかしら。


「サイラス様。あなた、本当に商売のいろはをご存知ないのね。……価値がないと切り捨てられた『ゴミ』を、いかにして『資源』に変えるか。それが真の投資家の仕事ですわ」


 わたくしは一歩も退かず、空を覆う巨大な闇を見上げました。

 わたくしの「絶対金感」が、その不気味な咆哮の中に、細かな『魔力の震え』を捉えます。

 それは絶望の叫びなどではなく、ただ方向を失い、滞留しているだけの「遊休資産」の嘆き。


「マリアンヌ、フェルム。……『強制競売オークション』の準備をなさい。この巨大なゴミ袋、今から解体して『小口販売』いたしますわよ」


『……ふん、無茶を言う小娘だ。だが、面白い! やってやろうじゃねえか!』


 地下金庫のフェルムが、わたくしの脳内で歓喜の声を上げました。

 わたくしが掲げた「アストレアの帳簿」が、アルビオンの蒼い光を吸収して黄金色に輝き始めます。


「これより、教皇庁所有の『正体不明の魔力集合体』の強制売却を開始いたしますわ! 第一の項目、この魔獣の『核』となる負の感情……。こちらは帝国の魔導炉の『冷却用触媒』として、一括査定で金貨百万枚!」


 わたくしの宣言と共に、フェルムが演算した「浄化の数式」が光の鎖となって、黒い影の右腕を縛り上げました。

 影が苦悶に歪みますが、わたくしは容赦なく次の「落札」を告げます。


「第二の項目、表面を覆う高濃度魔力霧。……こちらは新通貨アルビオンの『金利補填』として、全額没収いたしますわ! 落札者は……この街で働く、全ての民衆です!」


「な……神の影を、分割して配るだと!? 貴様、何を……!」


「お黙りなさい、サイラス様。……資産は流動させてこそ価値がある。あなたがたが大事に仕舞い込んで腐らせたこの魔力、今この瞬間に、わたくしが『民の富』として再分配リサイクルして差し上げますわ!」


 わたくしが指を鳴らした瞬間。

 巨大な魔獣の体が、フェルムの精密な「解体計算」によって、数万の蒼い光の粒へと分解されました。

 それらは恐怖に震えていた民衆や、剣を捨てた騎士たちの元へ、温かな「活力」として降り注ぎます。


「ああ……。体が、軽い……」

「聖女のパンを食べた時の嫌な感じがしないぞ。これは、本物の……」


 聖都を包んでいた闇は消え、そこにはただ、わたくしの「アルビオン」に還元され、人々の生活を支える純粋なエネルギーだけが残りました。

 

 神の権威という名の巨大な不良債権が、わたくしの手によって「小口の利益」へと解体されたのです。


「……計算、終了ですわ。サイラス次席執行官」


 わたくしは、膝をつき、砕けた算盤を見つめるサイラスの元へ歩み寄りました。


「あなたの召喚した『神』。査定額は……手数料を引いて、マイナス三千万枚。……その不足分、教皇庁の本部センターに請求書を送っておきますわね」


「……はは。負け、ですか。数字で世界を救う女……。なるほど、教皇猊下があなたを恐れるわけだ」


 サイラスは力なく笑うと、懐から一通の漆黒の招待状を取り出しました。


「ですが、セラフィナ様。これはまだ、前哨戦に過ぎない。……教皇庁の本拠地『聖都ソルレウス』。そこには、あなたが解体できない、真の『神の帳簿』が眠っていますよ」


 彼は霧のように姿を消しました。

 後に残されたのは、わたくしの光に照らされた、かつてないほど活気に満ちたサン・ヴァロールの街並み。


「……あら。教皇様直々の招待状? おーっほっほっほ!」


 わたくしは招待状を扇子で弄び、不敵に笑いました。

 アルリック陛下が、静かに剣を鞘に収め、わたくしの隣に立ちました。


「セラフィナ。次は、神の喉元に『領収書』を突きつけに行くんだな?」


「ええ、陛下。……世界で最も不透明な会計を行っているあの聖域。……わたくしが、一パーセントの狂いもなく『全額監査』して差し上げますわ!」


 令嬢の野望は、もはや一国の支配では収まりません。

 世界そのものを「買い取る」ための物語は、ここから更なる激動へと加速していくのです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございますわ!

「神様の影」をバラバラに解体して、民衆に「配当」として配ってしまうセラフィナ様……。

この圧倒的な「不敬の極み」、楽しんでいただけましたかしら?


宗教的な恐怖すらも、彼女の手にかかれば「ただの遊休資産」でしかありませんの。

サイラスを退け、聖都の一角を掌握したセラフィナ様。

ですが、戦いの舞台はついに、教皇庁の本拠地へと移りますわ!


次回、第21話「まえがき:第2部・中盤戦へ……。あら、失礼。第21話『聖都の裏帳簿、わたくしが全額監査いたしますわ』」。

いよいよ物語は、世界の魔力を司る「真の暗部」へと切り込みますわよ。


もし「神様を競売にかけるセラフィナ様、最高にクールだわ!」と思ってくださったなら、ぜひ「ブックマーク」を!

そして、下の【☆☆☆☆☆】を、セラフィナ様が配った光の粒のように輝く【★★★★★】にして、わたくしを応援してくださると嬉しいですわ!


皆様の評価という名の「資産」が、わたくしの筆を動かす最高のリターンですのよ。

それでは、次回もお楽しみに。ごきげんよう!

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