6.ナージェ領に向けて
これからの報告をするために、領主館に向かい、面会を願った。あれからお裾分けをしに何度も通ったので顔見知りだ。
応接室では、フィリップ様の横に小さな子がいて領主様は項垂れ、フィリップ様はにこやかで、その子は下を向いていた。
報告がてら話を聞くことになった。
「ま、フィリップ様だしね。俺らも拾われたわけだし。信頼できる、って思ったしね。その乳母さんもタイミングよかったよね。」
「うん?そんな風に思ってたんだ。」
「まぁ、さすがに気にするよ。怪しい人に言える内容じゃなかったし。だれにでも話せることでもないしね。」
その子はサディエール=ハンニというらしい。
生まれつき足が不自由で、歩くのに支障があるようだ。そして、まだ5歳。
「で、なんか用事があったんじゃないのか?」
「あ、俺たちはナージェ領に行こうかと思っていて、その報告に。」
「お!ちょうどいい。頼もうと思っていたんだ。」
フィリップ様の友人がナージェ領の次男で、私たちが行くなら、気にかけてくれるように手紙を出すつもりだったようだ。
ところが、サディエール君を預かったことで、悩むことになった。
サディエール君は実家から離れた方がいいが、知識不足、足の不自由もある。貴族籍を抜くことなく、手を貸してくれるだけの信頼をもてる人物が、辺境伯だ。だが、だれに辺境までの道中を頼むのがいいのか、彼を託せるのか、悩んでいたところに、私たちが来たようだった。
「その子と辺境に行くのは問題ない。その前に俺たちのことでもう一つ相談があって。」
スキルの一つ、武と癒しを統べる者であることを伝え、サディエール君の足を癒すことに問題があるか、確認した。使いこなせていないので、どこまで通用するのか分からないが、多少はマシになるかもしれないから、と。
「「「はぁ?」」」
「すごい!でもいいの?」
「召喚されたんだし、何らかのスキルだとは思っていたが」
「軽々しく言うな!」
「もしかして、スイとラズも普通じゃないのか?」
「えへっ」
「「「はあ。」」」
で、結局、ラズに教えてもらいながら少しずつ癒しをかけてみた。歩くには練習が必要ではあるものの、少しは改善した。あとは、移動中にラズが少しずつ癒しを施すことになった。
そして、私たちは馬車を乗り継いで辺境を目指した。




