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スターライト・パーク  作者: 玄遥斗


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15/16

第15話 孤独の先

 蓮は一人で通路を進んでいた。


 右腕の傷がまだ疼き、足取りは重かった。それでも彼は止まらなかった。後ろを振

り返ることもなく、ただ前だけを見て歩き続けた。


 静かすぎる。


 零と翔太の声が聞こえなくなってから、時間がどれだけ経ったかわからなくなって

いた。星の照明だけが冷たく足元を照らし、時折壁に浮かぶ星の模様が不気味に明滅

している。


「……ははっ」


 蓮は自嘲するように小さく笑った。


「結局、俺は逃げただけか」


 頭の中で、さっきの自分の言葉が何度もリピートされる。


『俺は先に行って道を確かめてくる』


 本当は違う。ただ、二人と一緒にいるのが耐えられなくなっただけだ。翔太が力を

手に入れて、零がそれを嬉しそうに見つめる姿。傷ついた翔太を優しく支える零の横

顔。あれを見ていると、胸の奥が焼けるように熱くなった。


 葵の笑顔が浮かんだ。


 電車の中で三人で並んで座っていた時、葵が自然に翔太の肩に寄りかかっていた

姿。ファミレスで笑いながら翔太の話を聞く横顔。全部、全部、翔太のものだった気

がする。


「……俺は、ただの明るい奴でよかったのかよ」


 蓮は壁を軽く殴った。拳から血がにじむ。


 その時、前方から低い唸り声が聞こえた。


 暴走したぬいぐるみ——半分溶けた狼型が二体、こちらに向かって這うように近づ

いてくる。目が赤く光り、牙を剥いている。


「来いよ……!」


 蓮は傷ついた右腕を無理やり動かし、落ちていた金属パイプを握った。痛みが脳天

まで突き抜けるが、彼は歯を食いしばって突進した。



 一匹の狼型に体当たりを決め、地面に叩きつける。もう一匹が背後から爪を振り下

ろしてきたが、蓮は回転しながらパイプを振り回し、頭部を強打した。ぬいぐるみは

断末魔を上げて動かなくなった。


 息を荒げながら立ち上がった蓮は、自分の手に視線を落とした。


「……俺だって、戦える。力だけなら、翔太より上のはずだ」


 でも、心のどこかでわかっていた。


 力だけでは、もうどうにもならないことを。


 さらに奥へ進むと、通路の様子が変わってきた。壁に張られた資料の一部が剥がれ


落ち、床に散乱している。蓮は一つを拾い上げ、目を細めた。




【第3次エッセンス抽出記録】


回収率 97.2%


残滓は実験用に僅少残置


アストラル・ソサエティ 上層部




「……上層部、か」


 蓮は紙を握り潰した。


 泉はもうすぐそこまで近づいている気がした。魔力の密度が異常なほど高く、空気

が重い。


 彼は一人、暗い通路の奥を見つめた。


 頭の中では、葵の笑顔と、翔太と零の姿が交互に浮かんでは消える。


「俺が……先に泉に着いて、もし何か願えるなら……」



 その先の言葉は、口に出さなかった。


 蓮は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。


 傷だらけの体を引きずりながら、彼はさらに奥へと進んでいった。


 一人きりの、暗く長い道のりを。

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