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第34話 一点突破

ついに終盤に入りました。

お盆が過ぎ、最初の日曜日。いよいよ大会当日。


 女性限定のフットサル大会。女性しかいないと思っていた志保たちは、会場にいる男性の多さに少し驚いていた。


「なんで出場しない男性がこんなにいるんだろ?」


 疑問をそのまま口にする志保に、後ろから健が答える。


「女性チーム限定って言っても、女性だけで活動してるチームはほとんどないからね。大抵は男女混合で活動してるし、その関係で来てるんだろう。俺が知ってる中で女性だけでやってるのは、オレンジマジックくらいかな」


「そうなんだ」


 今回は市外の大会ということもあり、健とゆかりが車を出してくれていた。荷物を降ろして準備をしていると、オレンジマジックの千絵とスクラッチの奈央が志保たちの元へやってきた。


「おっ、来たね」


「練習試合以来だね。今日も楽しくやろう。はい、これ対戦表」


 奈央が対戦表を理沙に手渡す。


「どれどれ……参加チームは6チーム、総当たり戦。PKまでやって完全決着で、勝ち点が多いチームが優勝……って、えっ!? 初戦がいきなりフローラル対スクラッチ!?」


 理沙が思わず声を上げ、メンバーたちが一斉に覗き込む。そこには、優勝候補スクラッチとの対戦がしっかり記されていた。


「これは陰謀だよ。出る杭を早めに叩き潰す、運営側の策略だよ」


「そうですわね。この相原財閥次期党首の私を落とし入れる、実に見事な作戦ですわ」


「ないないないない! そんなことあるわけ……いや、ないよね?」


 理沙が奈央と千絵を見ると、二人は苦笑しながら手を振った。


「ないない」


「えー、そっちの方が漫画みたいで盛り上がるのに。黒幕が裏で操ってる的な」


「そのテンションやめてくれる? 完全に私たち悪役なんだけど」


「ちっ!」


「舌打ちするな! なんでそんなに残念そうなんだ!」


 志保のボケに、奈央と理沙のツッコミが飛ぶ。


 すると千絵が理沙の肩をぽんと叩いた。


「大変だね。本当にお疲れ様」


「他チームからの同情はいらない。欲しいのはツッコミ役。最近は舞さんまでボケ始めたし、あと一人は必要だ!」


 理沙がメンバーを見ると、全員が目を逸らし耳を塞いでいた。顧問のゆかりまでもが同じポーズを取っている。


 理沙は大きくため息をついた。


「前にも言ったけど、私が何でもツッコむと思うなよ……」


「そろそろ開会式だよ。準備した方がいいんじゃない?」


「あ、ありがとうございます。おい、着替えるぞ」


 振り返った理沙の視界には、すでに誰もいなかった。


「理沙ー、早くー!」


 更衣室前から志保の声が響く。


「大声で名前呼ぶな!」


 そう言いながら、理沙も急いで後を追った。


 開会式を終え、志保たちはベンチに腰を下ろす。


 コートでは一試合目のオレンジマジックがウォーミングアップを始めていた。


 フローラルの初戦はその次。あと十五分ほどで試合が始まる。


「もうすぐだね。で、健さんはどっちの味方?」


 準備運動をしながら志保が聞く。


「味方?」


 健はきょとんとした顔で聞き返した。


「そうですわ。奈央さんと私、どちらを応援しますの?」


「いや、その聞き方は違うだろ」


「兄貴はどっちなの? 年上? 年下?」


「柚季、変な言い方するな! 今日は中立。どっちにもアドバイスはしない」


 きっぱり言い切る健。


 すると亜紀が涙目で詰め寄る。


「つまり奈央さん達を選びますの? 私達は捨てられますの?」


「ろくでなしなの」


「人聞き悪いな!」


 そんなやり取りを横目に、志保は試合に集中していた。


 オレンジマジックは明らかに試合を支配している。女性だけのチームとしての完成度が違う。


 それでも――大会ではスクラッチに勝てていない。


 志保はしばらく考えた後、意を決して口を開いた。


「ねえ、最初のスクラッチ戦に、全部ぶつけない?」


 振り返った志保の表情は、いつもの軽さがなかった。


 理沙もそれを感じ取り、真剣な声で問う。


「理由は?」


「どうせ全勝優勝なんて無理だよ。この試合見てれば分かる。だったらさ――スクラッチにだけでも勝ちたい。リベンジもしたいし」


 静かに、しかし強く言い切る。


 メンバー全員がその言葉を受け止める。


 やがて、亜紀が口を開いた。


「……まあ、理解はできますわ。そもそも五試合フルで戦える戦力ではありませんし」


「優勝狙わないならアリだと思うの」


「私も賛成です。全力でぶつかって、その後を考えればいいと思います」


 理沙は小さく苦笑し、健を見る。


 健は笑って頷いた。


「みんながそう言うなら、反対はしないよ。スクラッチに当たって――」


「砕けるな!」


「ごめん、超ごめん」


 場の空気が一気に和らぐ。


 理沙は改めて全員を見渡した。


「よし。スクラッチ戦は全力で勝ちに行く。他はその後で考える。いいな?」


「問題ありませんわ」


「うん」


「賛成です」


(コクコク)


「志保、これでいいか?」


 理沙が優しく笑う。


 全員の視線が志保に集まる。


 その顔には、迷いはなかった。


 身体の奥から、熱が湧き上がってくる。

ここまで読んでくれてありがとう!


フローラルの物語は終盤に入っています。

このメンバーでどこまで行けるのか、一緒に見届けてもらえると嬉しいです!


応援してくれると、みんなもっと頑張ります!

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