第3話 サッカー部が無理ならフットサル部を作る
少しづつですが志保、理沙の物語が動きます。
「はあ、はあ……さすが理沙のライバル。濃いキャラクターだったね」
廊下で立ち止まり、息を切らしながら後ろを振り返る志保。亜紀の姿がないことを確認すると、理沙も同じように息を整えながら首を振った。
「いやいや、ライバルじゃないし。名前なんだっけ?」
「うわ、理沙らしくないボケだよね。……私も覚えてないや」
苦笑しながら志保が同調する。
「まあ、あの人、あの調子なら絶対また絡んでくるよ。完全にマンマークだね」
「絡んでこなくていいし、マークされたくもない」
理沙は平手でツッコミを入れ、大きくため息をついた。
「んじゃ、理沙。職員室に行こう」
完全に息を整えた志保が促すが、理沙はきょとんとした顔で「なんで?」と即答する。
「え〜、部活のこと、一緒に先生に聞いてくれるって言ったじゃん」
「そんなこと言ったか?」
乗り気でない理沙にしがみつき、志保は首を振る。
「一緒に行こうよ〜。お願いだよ〜。一人にしないでよ〜」
「あ〜もう、離れなさい。一緒に行けばいいんでしょ。分かったから、は・な・れ・な・さ・い!」
志保を引き剥がし、理沙はまたため息をつく。
「一緒に行くだけだからな。聞きたいことは自分で聞くんだぞ」
「うん、分かった。任せておいて」
「かなり不安だけどな……。じゃあ行くぞ」
二人は職員室へ向かって歩き出した。
歩きながら志保は、ぶつぶつと練習を始める。
「えっと、部活を作るにはどうしたらいいんですか? 部活を作るにはどうしたらいいんですか?」
「……本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。私は本番に強い子、できる子だから」
「だから心配なんだけどな」
理沙は呆れながら先を歩く。
「えっと、先生に何を聞くんだっけ? 大丈夫、私はできる子、元気な子……だっけ?」
「全然違うな。っていうか、サッカーしか頭にないのか!」
「あれ、そうだっけ? でも理沙、ツッコミのバリエーション増えたよね」
「増やしたくない。志保がしっかりしてくれれば増えない」
そんなやり取りをしているうちに、二人は職員室の前に到着した。
志保は覚悟を決め、勢いよく扉を開ける。
「たのも〜!」
「その挨拶はツッコミを入れる気にもならないな……」
職員室の空気が一瞬止まる。
そんな中、志保はゆかりを見つけて駆け寄った。
「篠原先生〜!」
「あら……えっと、うちのクラスの……ごめんね、まだ顔と名前が一致してなくて」
「戸崎志保です」
「佐原理沙です」
「ありがとう。覚えたわ。それで、どうしたの?」
ゆかりが優しく問いかける。
しかし志保は――
「あの〜その〜えっと〜……」
案の定、しどろもどろだった。
「先生。この子、部活を作りたいそうです。女子サッカー部が希望です。どうしたら作れますか?」
理沙が割って入り、簡潔に説明する。
「部活ね。確か、部員が五人以上と、顧問の先生が必要だったはずよ」
「五人以上ですか? 顧問もこれで決まったから……あと三人か。あと二人にまかりませんか?」
「まかりません。あと三人、頑張ってね」
即答で却下され、志保は絶望の表情になる。
「それにナチュラルに私を人数に入れただろ。顧問が決まったって誰だ?」
志保の指先の先には――ゆかりがいた。
「顧問は篠原先生で決まりだね」
「ちょっと待って。私が顧問? 無理よ。サッカー分からないし」
「ルールは少しずつ覚えれば大丈夫だよ」
「お前は少し他人の都合を考えろ!」
理沙のツッコミが飛ぶ。
「それにサッカー部は無理よ」
ゆかりの一言で空気が止まる。
「え?」
「グラウンドは全部埋まってるの。サッカーは場所がないのよ」
「はい〜!?」
職員室に志保の声が響いた。
「静かに」
ゆかりにたしなめられる。
「しょうがない。諦めるぞ」
「諦めたらそこで試合終了って言ってたもん!」
「それバスケな」
――その瞬間。
「じゃあ、フットサル部!」
志保の目が輝く。
「体育館使えるなら、それでいい!」
一気にまくしたてる志保。
「じゃあお願いします!」
そう言い残し、志保は職員室を飛び出した。
「あ、ちょっと!」
「すみません、ああいう子なんです」
理沙が頭を下げる。
「廊下は走っちゃダメよ〜!」
「そっちかい!」
理沙がツッコむ。
「でも、本当に作るのかしら」
「作りますよ。あの子、絶対諦めないので」
ゆかりは微笑んだ。
「じゃあ、お願いね」
「……はい」
理沙は小さく頷き、職員室を後にした。
この後どうなるのか、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。
面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価もよろしくお願いします!




