第2話 サッカー部を作ろうとしたらお嬢様にライバル宣言された
まだまだ序盤ですが、読んで頂けたら嬉しいです。
校舎に入り、とりあえず教室に荷物を置いた二人は、入学式のために体育館へ向かった。そこには自分たちと同じように新しい制服に身を包み、希望に満ちた同級生たちが並んでいた。
やがて、厳粛な雰囲気の中で入学式が始まる。
「これから君たちはこの岡家高校の生徒として勉学に……」
校長の話を聞きながら、志保はだんだんと眠くなっていった。入学式前日、興奮してほとんど眠れていなかったのだ。
(寝ちゃいけない。ここで寝たら入学早々、居眠りした女って思われる)
首を振り、目を開け直す。しかし意思に反してまぶたは重く、頭がゆっくりと下がっていく。
――その瞬間だった。
志保の視界が白く弾けた。
次の瞬間、自分を含めた八人が抱き締め合い、涙を流している光景が浮かぶ。七人の中で唯一知っている顔は、親友の理沙。しかし、残りの六人には見覚えがない。
(なんだったんだろう、今の……?)
気づけば校長の話は終わり、PTA会長の話に変わっていた。
志保は窓から差し込む春の日差しに目を向ける。
(でも……なんだか、すごく楽しいことがありそうだな。たくさん素敵な思い出ができるといいな)
そう思った瞬間、眠気はすっかり吹き飛んでいた。
その時――
「新入生代表、佐原理沙」
「はい」
理沙の名前が呼ばれ、志保は思わず目を見開く。
(理沙が新入生代表? なんで?)
理沙が壇上へと上がると、周囲からざわめきが起きた。
「おい、あの子めちゃくちゃ可愛くね?」
「モデルみたいじゃないか?」
「トップ合格ってことだよな?」
「スタイル良すぎない?」
様々な声が耳に届く。
理沙の評価を聞きながら、志保は少しくすぐったい気持ちと誇らしさを感じていた。
ストレートの髪を束ねた理沙は、知性的な美少女そのものだった。常に冷静で周囲に気を配り、行動で示す。さらに運動神経も良く、欠点らしい欠点が見当たらない。
そんな理沙が親友であることを、志保は心から誇りに思っていた。
入学式が終わり、二人は教室へと戻る。
「まさか理沙が新入生代表だとは思わなかったよ」
「志保に言ったところで意味がないだろう」
「でもさ、『やったよ志保、私、新入生代表になっちゃった』とか言いたくならない?」
「ならない。仮になったとしても志保には言わないから安心していい」
教室の扉を開けると、途端に視線が理沙に集まった。
「さっきの代表だろ? 近くで見ても可愛いな」
「このクラス当たりじゃね?」
男子生徒たちの声が飛び交う。しかし理沙本人は何事もなかったかのように席に着いた。
「ねえねえ、注目されてるよ。どんな気分? 決勝ゴール決めた感じ?」
「決勝ゴールを決めたことがないし、その例えは間違っていると思う」
いつも通りの冷静さに、志保は少しだけ不満そうな顔をする。
「せっかく一番だったのに。サングラスに白いスーツで決めるしかないね」
「どこのサッカー選手だ。受かることが目的であって、一番はおまけだ」
そのやり取りの直後、チャイムが鳴り響いた。
担任の篠原ゆかりが教室に入ってくる。
「おはようございます。担任の篠原ゆかりです。まだ二年目の新米ですが、皆さんと一緒に成長していきたいと思っています。よろしくお願いしますね」
おっとりとした口調の自己紹介の後、簡単なホームルームが始まる。
志保はゆかりを見ながら、この高校生活が楽しくなると確信していた。
(本当に楽しくなるといいな)
ふと、先ほどの“八人”の光景が頭をよぎる。
(きっと出会えるよね。その日はいつかな)
自己紹介が終わり、チャイムが鳴る。
志保はすぐに理沙の元へ駆け寄った。
「ねえねえ、サッカー部ってどうやったら作れるのかな?」
「本気で作るつもりか?」
「もちろんだよ。伝説の始まりはここからだよ」
志保の真剣な目に、理沙は少しだけ驚く。
「……明日は雨だな」
「ひどくない!?」
そんなやり取りの最中、一人の女子生徒が立ちふさがった。
「ちょっとよろしいかしら、佐原さん」
茶色のロングヘアーの少女が、堂々とした態度で名乗る。
「この相原亜紀、あなたをライバルと認めてあげますわ」
「はい?」
二人は同時に首を傾げた。
「私は相原亜紀。相原財閥の正統後継者ですわ。生まれてこの方、私は誰にも負けたことがありません。しかし――」
亜紀が熱弁を振るう中、
「……で、部活の話なんだけどさ」
「現実逃避するな」
二人は普通に会話を続けていた。
「なんで無視するんですの!?」
ついに亜紀が爆発する。
その隙に、志保と理沙は静かにその場を離れていた。
気づけば亜紀は一人。
「……いないじゃない!」
周囲の視線が一斉に集まる。
(くっ……!)
顔を赤くしながら、亜紀は教室を後にした。
「ここまで読んでいただきありがとうございます。よければ感想いただけると嬉しいです!」




