第25話 新たな強敵、オレンジマジック
新しいライバルを登場させたことに少し後悔。
次の日。
スクラッチの練習に参加するため、志保たちは体育館へ向かっていた。
「今日は奈央さん、来てくれるかな? 今度こそ個人的にリベンジしたいんだけどな」
志保は、試合で奈央に完全に封じられたことを今でも悔やんでいる。
事あるごとに「リベンジする」と息巻いていた。
あの試合の後、一度だけ奈央が練習に来たことがある。だが、その時も志保はマークを外せず、何もできなかった。
スクラッチの男性メンバーに聞いても、奈央のディフェンス能力は折り紙付き。健でさえ嫌がるほどだ。
――だからこそ、志保は奈央に勝ちたかった。
「奈央さん、保育士の資格を取るために忙しいって言ってたよな。今日も来ないんじゃないかな?」
「残念ですが、その可能性が高いと思われますわ」
(コクコク)
理沙の意見に、亜紀と柚季も同意する。
大学で保育士資格を目指している奈央は、アルバイトもしているため、練習参加率が激減していた。
あの試合以降、メンバーが奈央と会えたのは一度きりだった。
「でも、優勝経験のあるスクラッチには勝ちたいよね。私も負けっぱなしは嫌だし」
「だよね、だよね。自分たちのレベルの基準にもなるし」
珍しく舞が熱を込めて語る。志保も同じ気持ちだった。
スクラッチに勝てれば、自分たちにもそれだけの実力がある証明になる。
逆に言えば、そこに届かなければ全国大会優勝など夢のまた夢だ。
個人技、連携、戦術――すべてを高めなければならない。
しかし現状、女性陣と試合できる機会は少なく、男性陣との試合ばかり。
それはそれで意味はあるが、やはり本番を想定した試合がしたい。
その想いが志保の表情に滲んでいた。
「でも、しょうがない。あの人たちは仕事もあるし、家庭もある。そのうち試合できるだろ。その日までレベルを上げてリベンジすればいい」
理沙が部長らしく、皆を落ち着かせる。
「そうですわね。同じ相手に二度負けるなんて、私の人生にはありませんわ」
「その割には定期テストでまた理沙さんに負けているの。説得力がないの」
「何で貴方はそうやって人の揚げ足を取りますの!」
亜紀と柚季のやり取りに、恒例の鬼ごっこが始まる。
それを見て、理沙と舞がため息をついた。
「ねえ、遅刻しちゃうよ。早く行こう」
志保が走り出す。
「遅刻常習犯のお前が言うな!」
理沙も走り出し、舞も笑顔で後に続いた。
体育館に到着し、ドアを開けた瞬間――
メンバーたちは驚愕した。
「なに、この人数……女の人がたくさんいる。なんで?」
「し、しかもかなり上手いですわ……志保さんと同じくらい」
コートには女性が八人。
しかも全員、サッカーではなく“フットサル”の動きだった。
そのレベルも明らかに高い。
その中の一人が、志保たちに歩み寄ってくる。
「あなたたちがフローラル? 私はチーム【オレンジマジック】のキャプテン、堀江千絵。今日の試合、よろしくね」
「はい~?」
突然の試合宣言に、フローラルのメンバーは声を揃えて驚いた。
そこへ健が入ってくる。
「え、千絵ちゃん? どうしたの? 今日オレンジ来るって聞いてないけど」
「直哉さんに“メンバー集めて来い”って言われたから。試合するんでしょ?」
二人の親しげな様子に、亜紀が明らかにそわそわし始める。
それを察した理沙が口を挟む。
「健さん、今日は女性だけで試合なんですか?」
千絵が答えた。
「そう。今日は私たちオレンジマジックとフローラルで試合。同じスクラッチに負けた者同士、仲良くやりましょう」
(負けた者同士?)
理沙はその言葉を聞き逃さなかった。
だが、その前に志保が口を開く。
「あの~、負けた者同士って、オレンジマジックもスクラッチに負けたの?」
「だからお前は礼儀を覚えろ!」
理沙のツッコミが炸裂する。
「すいません。この子、変な子なんで」
「とてもとても変な子なんです」
「誰よりも何よりも変なんですわ」
(コクコク)
満場一致だった。
千絵は笑いながら答える。
「うん、そう。大会ではスクラッチに負けてる。でも練習試合では何回か勝ってるよ」
「そんなにスクラッチって強いんですか?」
理沙がさらに踏み込む。
技術的にはオレンジマジックの方が上に見える。
それでも勝てない理由があるはずだった。
だが千絵は意味深に笑う。
「その答えは、私たちと試合すれば分かるよ。今日はよろしくね」
そう言って去っていった。
取り残されたフローラル。
最初に我に返ったのは志保だった。
「とりあえず試合だよ、試合! 女子だけの試合! しかもスクラッチのライバルチーム! こんな機会なかなかないよ! そんなわけで――いつ勝つの?」
「今でしょ!」
舞だけが即答し、顔を真っ赤にする。
「えっ、私だけ?」
「古いし」
「私にそんな庶民的なことを期待するなんてありえませんわ」
「さすがの僕でもそれは無理なの」
三人の冷たい反応。
志保が再び気合いを入れようとしたが、理沙がそれを制した。
「志保、分かってる。これはスクラッチへの挑戦権を得るための試合だ。やるからには勝つぞ」
理沙が力強く言う。
「行くぞ、フローラル!」
「おぉー!」
体育館に、五人の声が響き渡った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
物語も終盤に入りつつあります。
フローラルにとって大事な展開になるので、ぜひ続きを見てください。
引き続き応援よろしくお願いします!




