第21話 本気の練習、始まる
原文よりも読みやすいとは思いますが、情報量が足りない気がしています
次の日。授業を終えた志保たちが体育館に向かうと、そこには柚季の兄――健の姿があった。
急いで着替えを済ませた5人は、健の前に整列する。そんな様子を見て、健は苦笑しながら口を開いた。
「えー、今考えると、とてつもない脅しで今日からコーチを引き受けることになりました、足立健です」
「なんか本当にすいません。うちのメンバーが……本当にすいません」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
理沙と舞が何度も頭を下げる。だがその内心では、健がコーチになることを歓迎していた。
【スクラッチ】の強さを見れば、その指導力は明らかだ。メンバーは健を信頼し、練習メニューを一任している。そしてその成果は、確実に結果として現れている。
そんな人物がコーチに付けば、全国への道も見えてくる。
(まあ、亜紀は少しだけ可哀想だったけど)
理沙がちらりと隣を見ると、亜紀は顔を真っ赤にして整列していた。
「さて、自己紹介とかは知ってるからいいや。とりあえず、いつも通りに練習してくれるかな」
「「「はい!」」」
全員の元気な返事が体育館に響く。
「じゃあ、とりあえず体育館周りを5周するぞ」
理沙が先頭に立ち、全員を引っ張って走り出した。
その様子を見ながら、健は何かを書き留め始める。志保たちはいつも通り、真面目に練習をこなしていた。
(まあ、真面目にやってるな。間違ってはいないけど、正解でもないか)
そんなことを考えていると、背後からゆかりが声をかけてきた。
「どうですか? うちの生徒たちは?」
健は軽く会釈するだけで、特に驚いた様子もない。
それが気に入らないのか、ゆかりは少し不満そうな顔をしつつ、改めて尋ねた。
「チームは強くなれそうですか?」
「うーん、絶対とは言いませんけど、多分大丈夫だと思います」
その頃、理沙が健のもとへやってきた。
「一応、練習が一通り終わりました。あとは繰り返したり、少しだけ変えたりしているんですけど……」
自信なさげに報告する理沙に、健は優しく笑いかける。
「了解。とりあえず休憩して」
「はい」
理沙は頭を下げ、仲間のもとへ戻っていった。
そして健は、ゆかりに向き直る。
「先生、すいません。僕はバイトがあるので毎日は来られません。ですから先生にもフットサルを覚えてもらって、指導をお願いしたいんです。ということで、着替えてきてもらえます?」
「はい?」
ゆかりは完全に固まった。
顧問になったのはあくまで形式的なもの。フットサルの知識も経験もない自分が指導するなど、考えたこともなかった。
「ジャージくらいありますよね? 学校ですし、先生なんだから」
健がニヤリと笑う。
(あ、これ……仕返しだ)
ゆかりは悟った。
「えっ、私もフットサルするの? 無理無理無理!」
必死に拒否するゆかり。しかし健は容赦しない。
「人数が少ないですし、奇数は練習しにくいですから。今後のことを考えるなら、先生も多少はできた方がいいですよ」
「でも……」
迷うゆかりを見て、健が思いついたように声を上げる。
「みんな、ゆかり先生も練習に参加するから、着替えを手伝ってあげて。靴とかあったら貸してあげてくれる?」
「えっ!?」
志保たちが一斉に振り向いた。
そして次の瞬間――
「先生もフットサルやるんですか!?」
「確かに人数も揃いますし!」
(コクコク)
期待に満ちた目がゆかりに向けられる。
その視線に揺れる心。
(少しでも力になれるなら……)
だが――
「やっぱり無理!」
両手を振って拒否するゆかり。
しかし。
「志保、舞さん」
理沙の一言で空気が変わった。
「了解」
二人は即座に動いた。
「さあ、先生。着替えようか」
「大丈夫です、全然痛くないですからね~」
ゆかりの両脇を抱え、そのまま引きずっていく。
「ちょっと待って! ジャージも靴もないってば!」
必死の抵抗も虚しく――
「亜紀!」
パン、と理沙が手を叩く。
「大丈夫ですわ、先生。こんなこともあろうかと三橋に用意させてありますわ」
「準備万端すぎるだろ……」
健が呆然と呟く。
「いいんですよ、これで」
理沙が満足げに頷いた。
そして――
部室の中から、ゆかりの悲鳴が響いた。
「助けて~!」
読んでくれてありがとう!
ここからもどんどん面白くなる(多分)のでぜひ続きもどうぞ!
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