表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/38

第19話 フローラル

ついにチーム名が決まりました。

「あ~、もう悔しい、悔しい、悔しい! 理不尽なイエローカードをもらった気分だよ!」


 昨日のスクラッチとの試合の負けを、未だに引きずっている志保。練習のために部室で着替えながら、イライラしていた。


「本当に悔しいですわ。結局、1回目は0対1。2回目の対戦は0対3。屈辱ですわ。この私の初試合が敗北で終わるなんて……屈辱以外の何物でもありませんわ」


 亜紀も同じように苛立っている。そんな二人を見て、理沙が落ち着かせるように声をかけた。


「しょうがないだろ。私もあれだけ差があるとは思わなかった。だから、着替えたら昨日の反省会を先にしよう。それを練習に生かそう」


「ホワイトボード、大活躍だね」


 着替え終わった理沙がホワイトボードを出すと、志保が落書きをし始める。が、無言で後ろから殴られた。


「痛い~」


 志保が半泣きでしゃがみ込む。その様子を見ていた亜紀が、興味なさそうに言った。


「またコントの練習ですか?」


 舞と柚季も着替え終わり、ベンチに座る。


「昨日は完敗でしたね。あそこまで差があるとは思っていませんでした。ゴールを守りきれなくて、ごめんなさい」


 舞が頭を下げる。


「舞さんのせいじゃないですよ。チーム全体の問題ですから」


 理沙が慌てて頭を上げさせた。


「そうですわ。この借りは5倍返しですわ。当面の目標はあのチームに勝つこと。次に対戦する時はギッタギタですわ」


 亜紀も闘志を燃やす。


 しかし、柚季が静かに口を挟んだ。


「でも、完璧に戦術で負けたの。帰って兄貴に聞いたら『戦術と戦略』って言われたの」


 その一言で、場が静まる。


「戦術と戦略か……難しいな」


「私たちじゃ、戦術の“せ”の字もわかりませんわね」


 理沙と亜紀が頷く。


「まあ、この話は後だ。まずは基礎だな。やっぱり試合でも技術は絶対必要だと感じたし」


 そう言って体育館へ向かおうとした、その時――


「待って。もっと重要なことがある」


 志保が真剣な顔で言った。


「……なんだ?」


 静まり返る部室。


「私たち、チーム名がない」


「はあ?」


 見事にハモる4人。


「だってさ、健さんのチーム【スクラッチ】ってカッコいいじゃん? 大会とか見ても、みんなカッコいいチーム名あるでしょ。私たちも考えようよ!」


 しかし――


 全員、無言で部室を出ようとする。


「ちょっと待ってよ~!」



 基礎練習後の休憩時間。


「やっぱり監督とかコーチが必要かな」


 志保のつぶやきに、理沙が頷く。


「うん。昨日の試合で戦術の重要性は痛感した」


「あとチーム名も」


「それはどうでもいい」


 冷たいツッコミが飛ぶ。


 そこへ亜紀が腕を組んで入ってきた。


「チーム名は重要ですわ。この私、相原財閥次期党首が所属しているのですから」


「だよね!」


 志保が即座に便乗する。


「問題は、何も思いつかないことなんだよな……」


 理沙がため息をついた、その時――


「三橋!」


 亜紀が手を叩く。


「はい、こちらに用意しております」(プルプル)


「うぉっ!?」


 いつの間にか背後に立っていた老人。


「なんでみんな、そういう登場の仕方なの!?」


 志保と理沙が同時に後ずさる。


 その瞬間、志保がひらめいた。


「あっ! 第三者に決めてもらえばいいんだよ!」


 全員の視線が三橋に集まる。


 三橋は一歩前に出て、静かに語り始めた。


「戸崎志保様は【ライラック】。“友情”“無邪気”」


「佐原理沙様は【アカツメクサ】。“勤勉”“実直”」


「相原亜紀様は【スターチス】。“永久不変”」


「足立柚季様は【イエローサルタン】。“強い意志”」


「遠藤舞様は【桔梗】。“優しい温かさ”“清楚”」


 そして――


「チーム名は【フローラル】はいかがでしょうか。意味は“花のような”」


「フローラル……」


「いいね」


「かなり良いですわ」


「うん、好き」


(コクコク)


 自然と笑顔が広がる。


「決まりだね! フローラル!」


 全員でハイタッチ。


「三橋、良い仕事をしましたわ」


「ありがとうございます」(プルプル)


 三橋は静かに去っていく。


「おじいちゃん、ありがとう~!」


 振り返らない背中に、志保は頭を下げた。


「さあ、昼まで練習やるよ! 午後はミーティングとランニング!」


「助けて~!」


 部室に、元気な悲鳴が響いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


この先、フローラルがどう戦っていくのか、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ