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フットサル、しよ♪ --五人だけの女子フットサル部、初めての勝利へーー  作者: izumi


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第18話 勝てない理由

試合、動きのあるシーンって難しいですね

試合開始の笛が鳴り響き、両チームの選手が一斉に動き出した。


ゆかりがハラハラしながら試合を見守っていると、健がゆっくりと隣に歩み寄ってきた。


「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。どうせ試合にはなりませんから」


その言葉に、ゆかりの表情が一瞬で険しくなる。


「それ、どういう意味ですか?」


「気を悪くしないでください。でも、試合経験のない彼女たちがいきなり勝つことはありません。良くて引き分け。これは冷静な分析です」


丁寧な口調。しかしその内容は、ゆかりにとって大切な教え子たちを否定されたようにしか聞こえなかった。


「うちには全国レベルの志保ちゃんと舞ちゃんがいます。技術的には、失礼ですがそちらのチームに劣っているとは思いません」


そう言いながら、コートに視線を向ける。


志保と舞が中心となって声を出し、他の三人も必死に動いている。ボールをキープし、試合を組み立てる志保。


素人のゆかりの目から見ても、その技術は一段上に見えた。


(ほら、負けてないじゃない)


そう言いたげに健を見るが――


健の表情には、焦りは一切なかった。


「技術はもちろん大事です。サッカーじゃなく、フットサルの技術ですけどね」


健は淡々と続ける。


「でも、それと同じくらい重要なのが戦術と戦略です」


その瞬間だった。


志保からパスを受けた亜紀がミスをし、ボールを奪われる。


慌てて戻る五人。しかしスクラッチの女性陣は焦る様子もなく、ゆっくりとボールを回しながら舞の守るゴールへと迫っていく。


「今のボール奪取、偶然だと思います?」


突然の問いに、ゆかりは少し驚きながらも答えた。


「その言い方だと……違うんですか?」


「狙い通りです。取るべくして取りました」


攻守の切り替えが激しいフットサル。


気づけばまた志保がボールを持っている。


(頑張って……みんな……!)


祈るような気持ちで見守るゆかり。


だが――


志保は、ある地点から先に進めない。


小柄な女性がピタリとマークにつき、ドリブルで抜けない。


(どうして? 志保ちゃんは全国レベルなのに……)


その不安を見透かしたように、健が口を開いた。


「あのポニーテールの子、サッカー経験者ですよね。しかもかなりのレベル」


ゆかりは黙って頷く。


「だからマークは奈央さんです。うちのエース」


健の視線の先には、小柄な女性。


「元バスケ部で全国経験あり。バスケのディフェンスはフットサルにも応用できます」


淡々と続ける。


「条件が揃えば、僕でも抜けません」


ゆかりは言葉を失った。


「コートはサッカーの約四分の一。スペースがない。ドリブル主体の選手には厳しい環境です」


そして――


「ドリブルを止めれば、次はパス。そのパスコースを狙えばいい」


その言葉通り、志保がボールを奪われた。


「カウンター!」


健の声が飛ぶ。


すでに動き出しているスクラッチの選手たち。


「あっ……!」


奈央がそのまま舞と一対一。


シュート――


だが舞が飛び出し、体で止めた。


「……っ」


ゆかりは大きく息を吐いた。


「でも、さっきの試合ではもっと動けていましたよね?」


ゆかりの疑問に、健はすぐ答えた。


「さっきはうちがサポートしていましたから」


「サポート?」


「柚季はスピードと小回りが強み。でも、それを活かすにはスペースが必要です」


ゆかりは小さく頷く。


「だからスペースを作っていました。逆に今は消しています」


「……!」


「亜紀ちゃんは負けん気とフィジカル。ただし動きながらのトラップは不安定」


健の言葉は的確だった。


「だから動かしてミスを誘う」


ゆかりは息を呑む。


(この短時間でここまで分析してるの……?)


「そして――」


健はコートを見ながら続けた。


「あのポニーの子が後ろで持つ限り、攻め手は限定される」


その瞬間。


再びボールを奪われ――


シュート。


ボールは舞の足元を抜け、ゴールへ吸い込まれた。


「ナイス!」


歓声を上げるスクラッチ。


一方、志保たちは肩を落とす。


ゆかりが声をかけようとした、その時。


「まだ負けたわけじゃない! 切り替えよう!」


舞が叫んだ。


「ごめん、私が悪い。もっと回す!」


志保もすぐに顔を上げる。


その様子に、ゆかりは安堵した。


「気づいたかな」


健が小さく呟く。


志保のプレーが変わった。


無理なドリブルをやめ、パスを選択する。


「理沙、近く来て!」

「亜紀ちゃん、中!」


細かく指示を出しながら、ボールを回す。


しかし――


シュートには至らない。


「うーん……六十点」


健が呟いた。


「残り四十点は何ですか?」


ゆかりが食い下がる。


健は一瞬だけ考え――


「教えません」


「え?」


「僕は監督でもコーチでもないので。あの子たちが自分で見つけるべきです」


真剣な目だった。


ゆかりは何も言えなかった。


そして――


試合終了のブザーが鳴り響いた。

読んでいただきありがとうございます!


この作品は「チームで勝つ楽しさ」をテーマに書いています。

少しでもそれが伝わっていたら嬉しいです。


ここからさらに盛り上がるので、ぜひ最後まで付き合ってください!


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