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フットサル、しよ♪ --五人だけの女子フットサル部、初めての勝利へーー  作者: izumi


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16/18

第16話 全然うまくいかない

裏話ですけど、原文はもっとめっちゃ長いです。説明文になっています。

六月初旬。あれから約四週間が過ぎた。


運動神経の良いメンバーが揃い、朝練や各自の自主練の成果が早くも出始めていた。パスもシュートも最初に比べれば思い通りに蹴れるようになっている。明らかに個人のレベルは上がっていた。


「はぁ~。さすがに基礎練習ばっかりでは飽きますわ。試合がしたいですわね」


休憩中に亜紀がそう言い始めた。


「そうだな。そろそろ実戦練習も交えないと。でも、相手がいないんだよな。どこかのフットサル大会にでも出てみるか?」


「う~ん、確かに。このままじゃ夏高フットサル大会に間に合わないしね」


理沙の意見に志保が同調する。


(でも、その辺の大会に出てボロボロにされたら、亜紀ちゃんとか柚季ちゃん、フットサルを嫌いにならないかな?)


志保に一抹の不安が走った。


「何を悩んでいるの? 志保ちゃん」


いきなり背後からゆかりが現れ、志保の胸を両手で持ち上げながら声をかけた。


「うひょ~。何、なに、ナニ? えっ、えっ? もまれた? 何を? 何で?」


胸にコンプレックスを持つ志保は、人目も気にせず取り乱し、両手で胸を隠しながらゆかりからダッシュで離れる。


ため息をつきながら理沙が注意した。


「落ち着け、志保。ゆかり先生、冗談にも程度がありますよ」


そんな理沙に、ゆかりは悪びれもなく笑顔で返す。


「だって志保ちゃん、ぼーっとして隙だらけなんだもん。後ろからいたずらしたくなるのも仕方ないと思わない?」


「でも、そういうことをする前には事前に言ってほしいの。動画、撮り損ねたの」


「あなたの頭の中は一体どうなっていますの?」


柚季の願望に亜紀がツッコミを入れる。すると、柚季がジト目で亜紀を睨みつけた。そんな様子に見かねた舞が「まあまあ」と二人の間に割って入り、落ち着かせる。


「で、ゆかり先生、何か用事ですか?」


三人を完全に無視して理沙が質問すると、ゆかりは冷や汗を流しながら言いづらそうに口を開いた。


「え~とね、みんなに謝らないといけないことがあるんだけど……」


「なんかやったの、ゆかり先生?」


志保が理沙の肩口に顎を乗せながら尋ねる。そんな志保の顔を理沙が手でどかしつつ、ゆかりの返事を待つ。


「それがね……明日、土曜日じゃない?」


「うん、そうだね。半日みっちり練習するつもりだよ」


その言葉を聞いた瞬間、志保がいきなり亜紀と柚季の方を振り向き、目を光らせながら怪しく微笑んだ。


「ひぃ!」


亜紀と柚季が冷や汗をかきながら後ずさる。しかし、志保はまるでゾンビのようにじりじりと二人を追い詰めていく。


「ふっふっふ。逃がさないよ~。特訓だよ~。血反吐を吐くまでフットサルするよ~」


フットサルを始めてから、志保が隠れドSだと思い知った亜紀と柚季は、顔面蒼白になりながら抱き合って震えた。


そんな志保に、理沙が後ろからドロップキックを食らわせる。


「とりゃぁ~!」


「ぐえ~」


「やめろ! 亜紀はどうでもいいが、柚季ちゃんを怖がらせるな。大丈夫、柚季ちゃん?」


柚季の前で屍のようになっている志保を踏みつけながら、理沙が柚季を助け起こす。その横で亜紀は両腕を組み、頬を膨らませて拗ねていた。


「私はどうでもいいんですわね。この相原財閥次期当主を無視するなんて……」


理沙と亜紀が言い争いを始めるが、舞はそれを完全に無視してゆかりに笑顔で聞いた。


「明日、何かあるんですか?」


「舞ちゃん、フットサル部にだいぶ染まったみたいね。この状況を完全スルーできるようになるなんて」


呆れたようにゆかりが言うと、舞は笑顔で答える。


「朱に交わった結果です。これくらいのことで場を収めていたら、この部は崩壊しますから」


「あっそう……これくらいは当たり前なんだ」


ゆかりはハンカチを取り出し、冷や汗を拭った。


「で、本当にどうしたんですか、先生?」


もう一度、舞が聞き返す。ゆかりは本題を思い出し、非常に言いづらそうな顔になったが、意を決して話し始めた。


「あのね、明日なんだけど……体育館が使えないって言うのを忘れていたの。ごめんなさいね」


精一杯可愛い仕草で甘えたような声を出し、「ごめんなさい」と言うゆかり。


舞の後ろでドタバタ劇をしていた志保たちも動きを止め、一斉にゆかりへ顔を向けた。


ゆかりの前に立っていた舞は、言っていることが理解できず、


「はあ、そうなんですか……って、先生、キモいです……」


と震える声で言うしかなかった。


その瞬間、舞の身体に衝撃が走り、前のめりに倒れ込んだ。


「うわぁ、何~? お、重い……」


舞が背後を振り返ると、他の四人が舞に圧し掛かっていた。苦しそうな舞を無視して、志保がゆかりに食いかかる。


「なんで? なんで明日は体育館が使えないの?」


「そんなことより、舞さん、この私が重いですって? このモデル並みの体型の私が?」


「いや、亜紀、お前の方がおかしいよ」


(コクコクコク)


理沙と柚季も、舞の上に乗ったまま亜紀にツッコミを入れる。


「どうでもいいからどいて~」


「大きな胸でクッションになっているので良いではありませんか」


「その亜紀ちゃんの意見には激しく同意!」


(コクコク)


「で、先生。明日使えないってどうしてですか?」


理沙がようやく本題に戻した。ゆかりは、今度は悪びれもなく説明し始める。


「あのね、明日、バレー部が他校と練習試合をするの。うちの高校も入れて四校でやるから、体育館を全面使用するの。だから明日はフットサル部は使用禁止」


「はい、先生、質問です! その練習試合は今日決まったのでありますか?」


志保がそう聞くと、ゆかりは首を横に振った。


「ううん。決まったのは先週よ。私が言うのを忘れていただけ。えへっ♪」


そう言って、舌を出して自分の頭を小突く。そんなゆかりを、五人のジト目が貫いた。視線に気づいたゆかりは顔の前で手を合わせる。


「本当にごめん。まあ、明日は練習お休みってことで」


そんなゆかりに、理沙がため息まじりに言った。


「まあ、ここで責めてもしょうがないし、明日は休みってことで――」


「駄目だよ! 絶対に駄目!」


理沙の言葉を、志保が即座に遮った。


(ここで一日休んだら、せっかく覚え始めた技術を忘れちゃう。今は少しでもボールに触る時間を大切にしないと)


サッカー経験者の志保は、一日休むだけでボールタッチの感覚がずれることを知っていた。基礎練習を始めて一か月。今がどれだけ大事な時期か、身をもって知っている。


「今は身についてきた技術を身体に叩き込む時期なんだよ。一日休んだら、それを取り戻すのに二日以上かかる。どこかの公園でもいいから蹴ろうよ」


「そうだね。確かにそれは言えるかもしれない。基礎はとっても重要だしね」


志保に続き、ハンドボール経験者の舞も同調する。


そんな体育会系二人の意見を聞いて、理沙が考え込む。


「まあ、公園でも確かにボールは蹴れるが、なかなかハードル高いぞ」


「そうですわ。相原財閥次期当主の私が、必死にボールを追う姿を公衆の面前で見せるなんてありえませんわ」


亜紀が強く拒否の姿勢を見せた。


「柚季ちゃんはどう?」


志保が聞くと、柚季はタブレットをいじっていた。そんな態度に亜紀が怒り出す。


「あなたはこんな時にもタブレットですか? もう少し協調性を持ちなさいですわ」


理沙と舞と志保が慌てて亜紀を止める。しかし柚季は我関せずで、指を止めない。


「あなた、いい加減にしなさいですわ」


怒りが最高潮に達しようとしたその時、柚季の指が止まった。


「どうしたの? 柚季ちゃん?」


「明日、学校が終わって十四時にここに集合なの」


柚季はタブレットの画面を見せながらそう言った。


そこに映っていたのは、市営体育館だった。


「ここって市営体育館だよね?」


志保が聞くと、柚季は黙って頷く。


「ここで兄貴が毎週土曜日にフットサルの練習しているの。兄貴はフットサルチームのキャプテンをしていて、メールしたら参加していいって返ってきたの」


突然のカミングアウトに、四人は呆気に取られた。そんな中、最初に我に返ったのは意外にも亜紀だった。


「えっと、状況を整理しますと……柚季さんにはお兄様がいて、その方はフットサルチームを持っている。そして体育館で練習していて、そこに私たちがお邪魔できるよう、あなたが交渉した。そういうことですか?」


亜紀がまとめると、柚季は満足げに頷く。


その説明を聞いた志保が我に返り、柚季の肩を掴んで前後に激しく振った。


「マジで? ねえ、柚季ちゃん、マジで?」


首が取れそうなくらい揺さぶられながらも、柚季は頷くだけだった。


理沙も舞も我に返り、他チームと練習できることを素直に喜び始める。


「どんなチームなの? 女の人もいるの?」


「強さは? リーグとかに所属してるの?」


次々に質問が飛ぶ。だが、柚季の返答はまたしても予想外だった。


「僕も知らないの。兄貴のチーム、行ったことないの。だからどんな人がいるかも知らないの。でも、女性はいるの。写真を見たことあるの」


相変わらず無表情のまま、淡々と答える柚季。


「どんな練習してるのか、楽しみだね。試合とかできるのかな?」


「私の華麗なプレーをやっと見せる時が来ましたわね。明日が待ち遠しいですわ」


「じゃあ、私も行くわ」


突然、ゆかりが会話に入ってきた。


「えっ、先生も来るんですか?」


「当然でしょ。可愛い生徒に何かあってからじゃ遅いし、顧問なんだから当然です」


ゆかりが少しだけ偉そうに胸を張る。


「よし、じゃあ、明日は学校が終わったらみんなで集合して行こう」


部長である理沙がそう締めくくった。


(明日は私が頑張って、みんなを楽しく、そして勝つ喜びを知ってもらえるようにするんだ)


志保は心の中でそう誓った。

ここまで読んでくれてありがとう!


まだまだ序盤です。

このメンバーでどこまで行けるのか、一緒に見届けてもらえると嬉しいです!


応援してくれると、みんなもっと頑張ります!

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