第11話 五人目
令和になったのに勝利至上主義の顧問って未だにいるんでしょうか?
家に着いた舞はベッドに倒れ込み、物思いにふけっていた。
(やりたいこと……か)
ハンド部を辞めてから、ぽっかりと穴が空いたように何もなかった。
小学生の頃、両親に勧められて入ったサッカークラブ。友達に流されるまま任されたゴールキーパーというポジションは、不思議と自分に合っていた。
自分が守れば負けない。
目立たなくても重要な役割。
その感覚が楽しくて、気づけば夢中になっていた。
中学ではその才能が開花し、県選抜にも選ばれるようになった。
(あの頃は、部活のために学校に行ってたな)
期待されることが嬉しかった。応えられた時の達成感は、何にも代えがたいものだった。
(……いつからだろう)
期待が、プレッシャーに変わったのは。
ベッドの上を転がる。
本当は仲間と同じ高校に行きたかった。でも、また両親の都合で特待生として岡家高校へ。
(あそこから、全部変わった)
顧問は勝利至上主義。罰走は当たり前。年功序列も強く、下級生は理不尽に責められる。
ハンドボールは、次第に「楽しいもの」ではなくなっていった。
(なんでこんなことしてるんだろう)
勝つために、楽しさを捨てる。
それは本当に正しいのか。
ため息をつき、枕に顔を埋める。
そして、思い出す。
公園で出会った後輩たちの言葉。
(やりたいことが見つからないなら、一緒に見つけよう……か)
時計は午前二時半を指していた。
「……寝なきゃ」
そう思って目を閉じても、なかなか眠れなかった。
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翌日。
志保たちは昼休みに舞の教室へと向かっていた。
しかし――
「遠藤先輩、今日は休みだって~」
その一言で、三人はその場に崩れ落ちた。
「力抜けた……」
「期限ギリギリですわね……」
(コクコク)
「どうしよう、みんな」
「今気づいたのか!」
理沙のツッコミが飛ぶ。
結局、その日は進展なし。
(まだ悩んでるのかな……)
志保はそう思いながら教室へ戻った。
---
その頃、舞は昨日の公園にいた。
初めて仮病で休んだ学校。
ベンチに座り、風を感じる。
(また同じ思いをするのは嫌。でも……)
楽しく過ごしたい。
でも怖い。
そんな感情がぐるぐると巡る。
志保たちの顔が浮かぶ。
まっすぐで、楽しそうで――
(あんな風に、なれるのかな)
気づけば、うたた寝をしていた。
夢の中で、四人が笑顔で駆け寄ってくる。
抱きしめられて、なぜか涙が溢れていた。
(なんで……泣いてるの?)
目を覚ます。
頬には涙。
(……信じてみようかな)
小さく呟き、舞は立ち上がった。
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放課後。
舞は学校へと走っていた。
教室の扉を勢いよく開ける。
「戸崎さん、いる?」
しかし――誰もいない。
(帰っちゃった……?)
肩を落とす、その時。
「隣なの」
「うわぁぁ!?」
突然現れた柚季に驚き、尻もちをつく舞。
その瞬間、柚季はしっかり動画を撮影していた。
「何してるの!?」
「お宝なの」
「売るの!?」
やり取りは無視され、手を差し出される。
「……ありがとう」
「こっちなの」
柚季に導かれ、隣の教室へ。
扉の前で、一度深呼吸。
そして――開けた。
「戸崎さん、いますか?」
三人の視線が一斉に集まる。
「遠藤先輩!」
「待ってました」
「決めましたの?」
言葉が飛ぶ。
舞は一歩前に出て――
「私、フットサル部に入ります」
少し震えながらも、はっきりと。
「だから……これからよろしく」
笑顔だった。
志保は涙をこらえ、
理沙は優しく微笑み、
亜紀は満足そうに頷き、
柚季は無表情のまま、どこか嬉しそうだった。
そして――
「フットサル部へようこそ!」
四人の声が重なる。
教室いっぱいに、その声が響いた。
――これで、五人だ。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
ついにメンバーが揃いました。これから本格的に指導します
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