39 永遠の回帰
彼等は高台の上に立っていた。
言葉を交わさなかった。
ただじっと互いの顔を見ていた。
幾度も夢に現れ、
離れている時間をもどかしく思った日々は
ようやく静かに終わったのだ。
「もう二度と、離れないで」
「ああ」
抱き合う二人を、
風が優しく過ぎていく。
その風は、かつて別れた日の風と同じ匂いを運び、
それでいて、まったく新しい季節の気配を含んでいた。
二人は身体を離し、
風の方へと視線を向けた。
高台から望む景色は
もう秋の装いを始めようとしている。
色づきはじめた木々の葉が、
やがて散り、また芽吹き、
何度でも新たな季節をめぐらせるのだ。
マナはその風景を、
まるで遠い記憶を思い出すように見つめていた。
「きっとこの地上から人間が全て消えても、
ここは変わらずに美しいでしょうね」
言葉は、流れるように風が運んだ。
「風は変わらず吹いて、
水は変わらずに流れ続けるの。
ただ、そういうことなのよ」
世界はめぐる。
生命はめぐる。
魂もまた、何度でもめぐり戻る。
全てが失われたとしても、
それは本当の意味で失われたわけではない。
喪失ではなく、回帰なのだ。
――全ては回帰する。
かつて肉体から離れた生命もまた、
気の遠くなるような時の中をめぐり、
何度でも再生してきた。
その生命あるものの中で、
意味のないものは何一つなかった。
意味がなければ、
存在するはずすらないのだ。
マナは今、それを知り、理解した。
隣には、ユウがいる。
愛しい存在が。
そして今、彼女は何より、
自分自身であることを愛していた。
今この瞬間の自分であることを。
ユウを愛し、ユウの隣にある、
このかけがえのない生命と身体を、
静かに、深く、感謝した。
「行こう、マナ」
ユウがマナに手を差し伸べる。
マナは穏やかに微笑んで、
その手をとった。
「行きましょう、ユウ。
連れていって、何処までも」
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
一応、この物語は続きがあるので、準備ができたらまた連載したいと思っています。




