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黒衣の魔道士と災厄の具現

雷が起きる原理ってよくわかってないそうです。

 黒い魔力の柱は天を貫くかのようだった。シルフィードの眷属を周囲に放って索敵を行う。そして広がった視界は不気味この上ない黒衣の魔道士を見つけていた。発見されても特に怯むことなくグリモアからの魔力の放出を続ける。そして濃密な魔力に導かれるように周囲に魔物や亜人が集まってきた。魔力を吸収し、より異形へと変異してゆく。よく見るとキマイラなどの上位魔獣も生まれてきているようだ。空中からブレスで先制攻撃を行うがあまり効果がない。数度繰り返すが効果が薄いところを見るに、あの魔力の柱に相殺されているのだろう。

 仕方ないのでとりあえず地面に降り立つ。剣を抜き、一気に切り込む。剣に光の魔力をまとわせると抵抗なくスパっと切れてゆく。キマイラも一刀で真っ二つに鳴った時は、あのころの苦戦は何だっただろうと理不尽な気持ちになる。ミリアムは魔法と矢を放ってリリの上から支援してくれている。シリウスは・・・あれ?何故か人型で呪文を唱えていた。


【大地の精に願い奉る 我が敵は汝が敵なり 彼の者二度と日の目を見ること能わず ミノス・ラビリンス】

 地面が盛り上がったり沈み込んだりして地形が複雑に変化する。同時に周囲が大きく盛り上がり円状の迷宮が構築された。メリットとしてはこっちに近寄ってくる敵が分散されることか。


 リリに俺の頭上から退避するように伝える。ここに来るまでにシルフィードと相談してきた術式を組み上げる。真空を作り出すことで気圧を下げる。そこに水魔法で水球を放り込み、螺旋状の風でかき回す。モヤが濃くなりパチパチと光を放つようになってくる。渦を頭上に伸ばし、人工的に作り上げた雷雲を上下の筒状の空間に広げた。後はその筒の向きを変え放電させる。雷光が轟き、黒衣の魔道士に直撃した、と思ったが、何らかの障壁で防いだようだ。


「雷撃の魔法だと?」

「初見の魔法防いでよく言う」

「剣を触媒に雷撃を放つ術が東方に伝わると聞く」

「ああ、使い手を知っているが、これは全く別の原理だ」

「ふむ、面白い。だが時間切れだ、我が下僕を倒せるか?」

「ってかお前さん何者だ?」

「ふ、この期に及んで名乗るとでも?」

「まあ、思っちゃいないがな」


 一足飛びに踏み込んで剣を振り下ろす。だが手応えがない。幻影を残して本人はどこかに飛んだらしい。そして、洞窟の中から人影が現れた。その人物は同じようなローブをまとっていたが、顔はよく見知った人物のものだった。追放した第一王子のものだったからだ。


「ククク、猊下にいただいたこの力で俺は復讐を果たすのだ。みんな俺を莫迦にしやがって・・・」

「驚いた、生きてたのか」

「貴様、成り上がり者が!生まれついての貴種たる俺様に勝てると思っているのか」

「自分を俺様って言うよなたわけに俺が負ける要素はかけらほどもない」

「ふざけるな!黒き書よ、我がもとに来たれ!」


その言葉に従うように突き上げるような魔力の奔流は収まり、手元にグリモアが現れた。ブワッと魔力が広がりやつを包み込む。


「うわははははは、この力があれば俺は誰にも負けぬ。俺は国を取り戻し、そしてこの世界を支配するのだ!ぐわははははははは!」

「馬鹿笑いしやがって、喰らいやがれ!」

剣先に魔力を集中して放つ。リリのブレスにも似た閃光が走り、馬鹿笑いするバカ王子を貫いた。

「ふ、効かんな。がはははははははは!」

「うーん、腹に風穴開けても生きてるとかどんだけ人間離れしてるんだよ」

「無駄無駄無駄あああああああああ、ああああ?!」

「お?」

 

 魔力が急激に収束していく。そして傷口を塞いでいるのかと思ったら、そこから体内に入り込もうとしていた。目、口、耳、鼻、その他の穴から魔力が触手のように入り込んでゆく。もはや人間の言葉にすらなっていない断末魔ですら無い音を聞きながら様子をうかがう。

【主殿、あれはやばい】

【どういうことだ?】

【今までは人としての意識が残っていた、そして力はそれを振るうものの形となる】

【というと?】

【要するに、使うものの想像を超えることはないということだ】

【んで、あれは一体何だ?】

【先程までの戦いで命を落とした者達の負の感情だけを凝縮したもの?】

【ちょっとまて、そんなん一体どうしろと??】

【だがな、放置するとこの辺の地脈から一気に拡散して辺り一帯アンデッドで埋まるが?】

【あー・・・やるしか無いか】

【そういうことだ】


 魔力が集約された。人の形をした何かが虚ろな表情で俺を見ていた。バカ王子の意識も残っているのかすらわからん。油断なく剣を構えていたつもりだったが、黒い線が走ったと思ったら頰を少し削られた。流れる血を拭い改めて向き合う。黒い魔力で構成された人型は眼球の壱には黒い光で満たし、口は三日月のようにつり上がっていた。ああ、たしかにそうだ、こいつから一瞬でも目を離すなんてとんでもない。ましてやここから逃げるって選択肢はない。今倒さないと行けない。そう覚悟を決め、俺は剣先を向けた。

黒衣の魔道士は何者か。グリモアの依代となったバカ王子は、もはや終わらせるしか無い。天を貫くほどの魔力が人間サイズに凝縮されたらどうなるのか。あまり考えたくはなかった。


次回 人型の災厄

なんかいろいろと話しがぶっ飛んできているとか自覚しつつある作者が修羅場だ!

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